
体外受精前に必要な検査一覧|準備チェックリスト
体外受精(IVF)を始める前には、血液検査・ホルモン検査・感染症スクリーニング・子宮卵管造影・精液検査など、10項目前後の事前検査が必要です。すべての検査を終えるまでに1〜2周期かかるのが一般的で、費用は保険適用下で合計1〜3万円程度が目安となります。
「検査が多くて何から受ければいいかわからない」「いつまでに終わらせる必要があるの?」という声は少なくありません。この記事では、体外受精の事前検査を必須・オプション別に整理し、月経周期に合わせたスケジュールと費用の目安をまとめました。検査漏れなく準備を進めるためのチェックリストとしてお使いください。
この記事のポイント |
体外受精前の必須検査は血液一般・ホルモン値・感染症・子宮卵管造影・精液検査など約10項目 |
検査は月経周期に合わせて進め、1〜2周期で完了するスケジュールが標準的 |
2022年4月の保険適用拡大により、多くの検査が3割負担で受けられるようになった |
オプション検査(ERA・EMMA・子宮鏡など)は過去の治療歴や医師の判断で追加される |
体外受精前に必要な検査の全体像|必須検査は約10項目
体外受精の事前検査は大きく分けて「女性側の検査」「男性側の検査」「カップル共通の感染症検査」の3領域があり、合計で10項目前後になるのが標準的です。クリニックによって若干の違いはありますが、日本生殖医学会のガイドラインに沿った基本項目はほぼ共通しています。
検査が必要な理由
体外受精は採卵・胚移植という身体的負担を伴う治療です。事前検査には以下の目的があります。
- 安全に採卵・移植を行える身体状態かどうかの確認
- 卵巣予備能の評価による刺激法の選定
- 感染症の有無による院内感染防止と胎児への垂直感染リスクの排除
- 子宮内環境の評価による着床率の向上
検査の有効期限に注意
感染症検査は多くのクリニックで6か月〜1年の有効期限が設定されています。他院から転院した場合でも、期限内であれば結果を持参できるケースがあるため、紹介状とともに検査データを受け取っておくと再検査の手間を省けるでしょう。
女性側の必須検査一覧|血液検査・ホルモン・画像検査
女性側の検査は血液検査(ホルモン値・貧血・凝固系)、画像検査(超音波・子宮卵管造影)、子宮頸がん検診の3系統に分かれ、月経周期の時期ごとに受ける項目が異なります。
血液・ホルモン検査
検査項目 | 測定タイミング | 目的 |
|---|---|---|
FSH・LH・E2(エストラジオール) | 月経3日目前後 | 卵巣機能の基礎評価 |
AMH(抗ミュラー管ホルモン) | 周期を問わず可 | 卵巣予備能の推定(残存卵胞数の指標) |
プロラクチン(PRL) | 早朝空腹時が望ましい | 高プロラクチン血症の除外 |
甲状腺機能(TSH・FT4) | 随時 | 甲状腺異常による排卵障害・流産リスクの評価 |
血算・凝固系(PT・APTT) | 随時 | 採卵時の出血リスク評価 |
血糖・HbA1c | 随時 | 糖代謝異常の有無(PCOS関連) |
AMHは卵巣刺激の方法を決める重要な指標で、値が低い場合は低刺激法、高い場合はOHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスクを考慮した刺激法が選ばれる傾向にあります。
画像検査・子宮評価
検査項目 | タイミング | 目的 |
|---|---|---|
経腟超音波検査 | 初診時・月経中 | 子宮筋腫・卵巣嚢腫・胞状卵胞数(AFC)の確認 |
子宮卵管造影検査(HSG) | 月経終了後〜排卵前 | 卵管の通過性と子宮内腔の形態評価 |
子宮頸がん検診 | 随時 | 1年以内の結果がなければ実施 |
体外受精では卵管を介さず受精させるため、「卵管検査は不要では?」と思われがちですが、卵管水腫がある場合は着床率を下げるとの報告があり、事前に確認しておく意義があります。
感染症スクリーニング|カップル双方で受ける項目
感染症検査はカップル双方を対象に実施され、B型肝炎・C型肝炎・HIV・梅毒・クラミジアが基本セットです。院内感染の防止と母子感染リスクの事前評価が主な目的となります。
検査項目 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
HBs抗原(B型肝炎) | 夫婦 | 陽性の場合は培養環境の分離管理が必要 |
HCV抗体(C型肝炎) | 夫婦 | 同上 |
HIV抗体 | 夫婦 | 陽性時は専門施設での治療が検討される |
梅毒(RPR・TPHA) | 夫婦 | 先天梅毒予防のため必須 |
クラミジア抗原・抗体 | 主に女性 | 卵管障害の原因評価にも関連 |
風疹抗体 | 女性 | 抗体価が低い場合はワクチン接種を検討(接種後2か月は避妊が必要) |
風疹抗体が不十分な場合、ワクチン接種後に2か月間の避妊期間が必要となるため、治療スケジュールに影響します。早めの確認が望ましいでしょう。
男性側の検査|精液検査と感染症
男性側で必須となるのは精液検査と感染症スクリーニングの2項目です。精液検査の結果は体外受精(IVF)か顕微授精(ICSI)かの判断材料となるため、治療方針を左右する重要な検査といえます。
精液検査の基準値
WHOが2021年に改訂した精液検査の基準値(第6版)は以下のとおりです。
項目 | 基準値(下限参考値・第5パーセンタイル) |
|---|---|
精液量 | 1.4mL以上 |
精子濃度 | 1,600万/mL以上 |
総精子数 | 3,900万以上 |
運動率 | 42%以上 |
正常形態率 | 4%以上 |
精液所見は体調や禁欲期間によって変動するため、1回の結果だけで判断せず、2〜3回の検査で傾向を確認するのが一般的です。禁欲期間は2〜5日が推奨されています。
追加検査が検討されるケース
精液所見が著しく低い場合や無精子症が疑われる場合は、ホルモン検査(FSH・テストステロン)や染色体検査、精巣超音波検査が追加されることがあります。泌尿器科との連携が必要になるケースも。
オプション検査|治療歴や状態に応じて追加されるもの
反復着床不全や流産歴がある場合、あるいは医師の判断により、標準検査に加えてオプション検査が提案されることがあります。保険適用外の項目が多いため、費用面の確認も大切です。
検査名 | 目的 | 費用目安(自費) |
|---|---|---|
ERA検査(子宮内膜受容能検査) | 胚移植に最適な時期の特定 | 約10〜15万円 |
EMMA・ALICE検査 | 子宮内フローラ・慢性子宮内膜炎の評価 | 約6〜8万円 |
子宮鏡検査 | 内膜ポリープ・癒着の直接観察 | 保険適用可(数千円〜) |
不育症検査(抗リン脂質抗体など) | 反復流産の原因精査 | 保険適用の項目あり |
PGT-A(着床前遺伝学的検査) | 胚の染色体異常のスクリーニング | 胚1個あたり約5〜10万円 |
ERA検査は「着床の窓」のずれを調べるもので、複数回の胚移植で着床しない場合に検討されます。ただし、すべての方に必要なわけではなく、初回の体外受精から行うケースは限定的です。
検査スケジュール|月経周期に合わせた進め方
体外受精前の検査は月経周期に合わせて段階的に進めるため、最短でも1周期、通常は1〜2周期(約1〜2か月)を要します。以下は一般的なスケジュールの目安です。
モデルスケジュール(1〜2周期)
時期 | 実施する検査 |
|---|---|
初診時(随時) | 問診、経腟超音波、感染症採血、一般血液検査、AMH |
月経2〜4日目 | FSH・LH・E2(基礎ホルモン値)、AFC測定 |
月経終了後〜排卵前(7〜11日目頃) | 子宮卵管造影検査(HSG) |
排卵後(高温期) | プロゲステロン測定(黄体機能の評価) |
任意のタイミング | 精液検査(男性)、子宮頸がん検診 |
全結果揃い次第 | 治療計画の説明・同意書の作成 |
スケジュールを効率化するコツ
- 初診を月経開始日付近に合わせると、基礎ホルモン検査まで一度に済ませられる
- 男性の精液検査は女性の検査と並行して進められるため、早めに予約しておく
- 他院での検査結果があれば持参して重複を避ける(有効期限はクリニックに確認)
- 風疹抗体が低い場合はワクチン接種後2か月の待機が発生するため、最優先で確認する
費用の目安|保険適用と自費の違い
2022年4月から体外受精が保険適用となり、事前検査の多くも3割負担で受けられるようになりました。保険適用下での検査費用は合計1〜3万円程度が目安ですが、オプション検査は自費となるため注意が必要です。
保険適用される主な検査
- 血液一般検査・ホルモン検査(FSH・LH・E2・AMH・甲状腺など)
- 感染症スクリーニング(HBs・HCV・HIV・梅毒・クラミジア)
- 経腟超音波検査
- 子宮卵管造影検査
- 精液検査
- 子宮頸がん検診(自治体の補助もあり)
自費になりやすい検査
ERA・EMMA・ALICE・PGT-Aなどの先進医療に分類される検査は保険適用外です。先進医療として認定されている項目は保険診療との併用(混合診療)が可能ですが、認定外の項目と併用すると全額自費になるケースがあるため、事前にクリニックへ確認しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
体外受精前の検査にはどのくらい時間がかかりますか?
月経周期に合わせて検査を進めるため、1〜2周期(約1〜2か月)が一般的です。初診のタイミングを月経開始日付近にすると効率的に進められます。
他院での検査結果は使えますか?
有効期限内の結果であれば、多くのクリニックで流用可能です。感染症検査は6か月〜1年、ホルモン検査は3〜6か月を有効期限とするクリニックが多い傾向にあります。紹介状と一緒にデータを受け取っておくとスムーズです。
男性も必ず検査を受ける必要がありますか?
精液検査と感染症検査は必須です。精液所見は体外受精か顕微授精かの判断に直結するため、治療方針を決めるうえで欠かせません。
AMHが低いと体外受精はできませんか?
AMHが低い場合でも体外受精は可能です。ただし、採卵で得られる卵子の数が少なくなる傾向があるため、刺激法の選択や採卵回数について医師と十分に相談することが大切です。
検査で痛みがあるものはありますか?
子宮卵管造影検査(HSG)は造影剤を注入する際に痛みを感じる方がいます。痛みの程度には個人差があり、鎮痛剤を事前に処方するクリニックもあるため、不安な場合は事前に相談しましょう。
検査費用が高くて不安です。助成金は使えますか?
保険適用下の検査は3割負担で受けられます。また、高額療養費制度を利用すれば月ごとの自己負担額に上限が設定されます。自治体独自の助成制度がある場合もあるため、お住まいの市区町村に確認してみてください。
検査結果が出るまでにどのくらいかかりますか?
血液検査は数日〜1週間程度で結果が出ます。AMHや感染症検査は外部検査機関に依頼するクリニックもあり、その場合は1〜2週間かかることも。結果がそろい次第、治療計画の説明に進むのが一般的な流れです。
まとめ
体外受精前の検査は、安全な治療と妊娠率の向上を目的として行われます。必須検査は血液・ホルモン・感染症・画像検査・精液検査の約10項目で、月経周期に合わせて1〜2周期で完了するのが一般的です。保険適用により費用負担は軽減されていますが、オプション検査は自費となるケースがあるため、事前にクリニックへ確認しておくと安心でしょう。検査結果をもとに最適な治療計画が立てられるため、漏れなくスムーズに進めることが治療への第一歩となります。
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を推奨するものではありません。具体的な検査内容や治療方針については、担当の医師にご相談ください。
まずはクリニックで相談を
体外受精を検討されている方は、まず不妊治療専門クリニックの初診予約をとりましょう。初診時に今後のスケジュールや費用の見通しを具体的に確認できます。検査結果や紹介状がある場合は持参することで、よりスムーズに治療計画を立てられます。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
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