EggLink

不妊治療中の転職タイミング|キャリアチェンジの判断

2026/4/22

不妊治療中の転職タイミング|キャリアチェンジの判断

不妊治療中に転職を考えるのは、珍しいことではありません。NPO法人Fineの調査によると、不妊治療経験者の約8%が「治療を機に転職した」と回答しています。通院のしやすさ、職場の理解、経済的な安定——これらを天秤にかけながら最適な判断を下すのは簡単ではないでしょう。この記事では、不妊治療中の転職タイミングを見極めるための判断軸と、実行時の注意点を解説します。

この記事のポイント

  • 転職すべきタイミングと避けた方がよいタイミングの判断基準
  • 転職活動と不妊治療を並行するスケジュール管理
  • 面接で不妊治療をどう扱うかの実践的アドバイス

転職を検討すべき3つのサイン

不妊治療中の転職には慎重さが求められますが、以下のような状況であれば、転職を真剣に検討する価値があります。

1. 通院が物理的に困難な職場環境

フレックスやテレワークの制度がなく、時間単位有給も取れない職場では、通院のたびに丸1日の有給を消化することになります。年間の有給日数を超えて治療が長引く場合、欠勤扱いや評価低下のリスクが生じます。

2. 職場のハラスメントや無理解が改善しない

上司や同僚に治療のことを伝えても理解が得られず、嫌味や不利益な扱いが続く場合は、環境を変えることが最善策になりえます。人事部やハラスメント相談窓口に相談しても改善しない場合は特にそうでしょう。

3. 治療費の経済的負担が厳しい

2022年4月から体外受精・顕微授精にも保険が適用されましたが、先進医療の併用や回数制限を超えた治療は自費となります。より給与水準の高い企業への転職で、経済的な余裕を確保するという考え方もあります。

転職を避けた方がよいタイミング

一方で、以下のタイミングでの転職は慎重に判断した方がよいでしょう。治療と転職を同時に進めることの負荷は、想像以上に大きいものです。

採卵・移植周期の直前〜直後

採卵や移植は身体的・精神的な負担が大きく、この時期に面接や入社準備を並行するのは現実的ではありません。周期の合間(治療お休み期間)に転職活動を集中させるのが合理的です。

入社直後に長期休暇が必要になる場合

入社してすぐに通院のための休暇を頻繁に取ると、新しい職場での信頼構築が難しくなる可能性があります。治療スケジュールと入社時期を逆算して計画を立てましょう。

判定待ちの期間

移植後の判定日までは結果が見えず、精神的に不安定になりやすい時期です。重要なキャリア判断は、治療の一区切りがついてからの方が冷静に行えます。

不妊治療に理解のある職場の見つけ方

転職先を選ぶ際に、不妊治療との両立しやすさを事前に見極めるポイントをまとめました。

チェックすべき5項目

確認項目

確認方法

フレックス・テレワーク制度の有無

求人票・企業HP・面接時の質問

不妊治療休暇・特別休暇の有無

人事制度ページ・口コミサイト

くるみんプラス認定の取得状況

厚労省の認定企業リスト

女性管理職比率・育休取得率

企業の情報開示・CSRレポート

通勤時間とクリニックへのアクセス

地図で確認(自宅→クリニック→職場の動線)

くるみんプラス認定とは

厚生労働省の「くるみんプラス」は、不妊治療と仕事の両立支援に取り組む企業を認定する制度です。認定を受けた企業は、不妊治療休暇の整備や相談窓口の設置など、一定の支援体制を有しています。転職先を探す際の有力な指標の一つです。

転職活動と不妊治療の両立スケジュール

転職活動と不妊治療を同時並行するためのスケジュール管理を解説します。

治療周期と転職活動のタイムライン例

時期

治療

転職活動

治療お休み期間

通院なし

情報収集・書類作成・応募

卵胞チェック期

週1〜2回通院

オンライン面接に絞る

採卵・移植周期

集中的に通院

転職活動は一時停止

判定〜結果確認

経過観察

結果を踏まえて次のステップ検討

転職エージェントの活用

自分で求人を探す時間が限られている場合、転職エージェントの利用は有効です。通院日を避けた面接調整や、テレワーク可能な企業の絞り込みを依頼できます。エージェントに不妊治療中であることを伝えるかどうかは任意ですが、「通院が必要な治療中なので、柔軟な働き方ができる企業を優先したい」と伝えると、マッチング精度が上がります。

面接で不妊治療についてどう扱うか

面接で不妊治療中であることを伝えるかどうかは、最も悩むポイントの一つです。法的な観点と実践的な判断基準を整理しました。

伝える義務はない

不妊治療中であることを面接で報告する法的義務はありません。採用選考において、妊娠・出産に関する質問をすること自体が、男女雇用機会均等法のガイドラインで不適切とされています。

伝えた方がよいケースもある

入社直後から頻繁な通院が見込まれる場合は、内定後に「定期的な通院が必要な治療を受けている」と伝えておくことで、入社後のギャップを防げます。治療内容の詳細まで話す必要はありません。

聞かれた場合の対応例

「今後のライフプランについてお聞きしてもよいですか」と聞かれた場合:

「長期的にキャリアを築いていきたいと考えています。定期的に通院が必要な状況がありますが、業務に支障が出ないよう調整いたします。」

転職後に治療を再開する際の注意点

新しい職場に入った後、スムーズに治療を継続するためのポイントです。

試用期間中の立ち回り

多くの企業で3〜6か月の試用期間が設定されています。この期間は業務の習熟と信頼構築に注力し、通院は最低限に抑えるのが現実的です。可能であれば、転職前に治療の「お休み期間」を設け、入社後すぐの集中通院を避ける計画を立てましょう。

新しい職場での制度確認

入社後は早い段階で、人事部にフレックス・テレワーク・特別休暇の利用条件を確認しましょう。「入社○か月後から利用可能」といった制限がある場合もあります。

クリニックの変更が必要か検討する

転職に伴い通勤経路が変わった場合、現在のクリニックに通い続けるのが困難になることもあります。新しい勤務地や自宅から通いやすいクリニックへの転院を、早めに検討しておきましょう。

よくある質問

Q. 不妊治療中の転職は不利になりますか?

不妊治療中であること自体が選考で不利に扱われることは、法律上あってはなりません。面接で治療の有無を聞くこと自体がガイドラインに反します。ただし、入社直後に長期休暇が必要な場合は、事前の根回しが重要です。

Q. 転職して健康保険が変わると、治療費に影響はありますか?

保険適用の治療であれば、健康保険が変わっても自己負担割合(3割)は同じです。ただし、高額療養費制度の限度額は所得区分で変わるため、給与が上がると自己負担額の上限が上がる場合があります。また、付加給付(企業独自の医療費補助)がある健保の場合、転職で失うこともあるので確認しましょう。

Q. 退職して治療に専念してから再就職するのはどうですか?

治療に専念するための退職も一つの選択肢です。ただし、ブランクが長くなると再就職が難しくなるリスクがあります。退職する場合は、貯蓄の見通し、再就職の計画、パートナーとの合意を十分に確認してから判断してください。

Q. 転職後すぐに有給は使えますか?

労働基準法では、入社後6か月経過し、全労働日の8割以上出勤した場合に10日間の有給が付与されます。ただし、入社初日から有給を付与する企業もあります。入社前に確認しておきましょう。

Q. 転職先で不妊治療休暇があるかどうか、面接で聞いてもいいですか?

直接「不妊治療休暇」と聞くのに抵抗がある場合は、「特別休暇制度にはどのようなものがありますか」「フレキシブルな働き方をサポートする制度はありますか」と聞くと自然です。

まとめ

  • 転職の判断は「通院のしやすさ」「職場の理解」「経済的安定」の3軸で考える
  • 採卵・移植周期の最中は転職活動を避け、お休み期間に集中的に動く
  • くるみんプラス認定企業やテレワーク可能な企業を中心に探す
  • 面接で不妊治療を報告する義務はないが、入社後の両立を見据えた情報開示は有効

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別のキャリア相談や法的助言を行うものではありません。転職に関する判断は、ご自身の状況に合わせて慎重に行ってください。

E

この記事を書いた人

EggLink編集部

医療・婦人科専門メディア

産婦人科・婦人科に関する正確で信頼性の高い情報をお届けします。医療監修のもと、女性の健康に役立つコンテンツを制作しています。

公開:2026/4/22更新:2026/5/2