治療中の気持ちや質問を、ノートやメモに書き留めたいと思うことがあります。書くことで整理しやすいと感じるか、負担になるかは本人によって異なります。書かない選択や途中でやめる選択もあります。
日常のメモと、研究で内容や回数を決めて行う「筆記開示」、専門家が行う心理的な支援は同じではありません。書けること・前向きに考えることを妊娠や治療継続の条件にしないでください。
書いてみたい場合のメモの例
| 確認したいこと | 整理・相談のポイント |
|---|---|
| 今の気持ち | 言葉にできる範囲で「不安」「疲れた」等。すべて説明しようとしない |
| 今いちばん困ること | 結果を待つこと、仕事や費用等、いま挙げたい項目だけでよい |
| 診療で聞くこと | 検査の意味、次の予定等。質問を気持ちの記録と別にまとめてもよい |
| 必要な連絡 | 診療先から求められた症状・服薬等の連絡は、メモだけで済ませず伝える |
| 見せる範囲 | 自分用か、医療者等に共有したい部分があるかを本人が選ぶ |
この表は記入のための一例です。実際の患者の記録や、効果が確認された治療用の様式ではありません。一言でも、項目を使わなくてもかまいません。
研究の筆記開示を、すべての書き方の効果と同一視しません
2017年の体外受精・顕微授精を受ける人たちの無作為化試験の抄録では、決められた課題を書く群と中立的な内容を書く群が比較されています。抑うつ症状に小さい改善が示された一方、不安や妊娠率の有意な改善は確認されず、男性の不妊に関する苦痛が増した項目も報告されています。
これは、毎日書けば誰でも気分が改善する、書くことで妊娠・出生が増えるという意味ではありません。研究の方法をそのまま本人の必須手順にもできません。Frederiksenら(2017):原著抄録・Aarhus大学掲載
「Pennebakerの研究だからストレスホルモンが下がる」「手書きとデジタルの効果は同じ」といった一般化は用いません。どの研究の対象・方法・結果かと、本人が日常で書くことの目的を分けます。
時間・頻度や、書く内容を義務にしません
一回十五〜二十分・週二〜三回を全員に必要な目安として決めず、書きたい内容と負担に合わせます。つらい体験を詳しく書き続ける、嫌な感情を必ず前向きな言葉に直す、寝る前に必ず振り返る必要もありません。
書くことで苦しくなる、眠りにくくなる、記憶が押し寄せる等があれば中断し、ひとりで続けて対処しようとしないでください。書いて晴れないことを、努力不足や書き方の間違いにしません。
保管と共有を選び、診療に必要な連絡は別にします
紙の保管場所、端末のロックや共有アカウント、通知・バックアップ等を確認します。個人的なことを書けば自動的に誰にも見られない安全な場所になるわけではありません。特定のアプリやオンラインサービスの安全性を確認済みとするものでもありません。
パートナー等へ見せる義務はありません。見せたい場合も、必要な部分だけを選ぶことができます。薬の副作用や症状、予約の変更等、診療先へ連絡が必要なことは私的なノートに残すだけで済ませず、指定された方法で連絡します。
セルフケアだけで抱えず、支援を求められます
落ち込みや不安、睡眠・食欲の変化等で生活に支障がある場合は、診療先や心理職へ相談できます。合うセルフケアを見つけることや、一定の二週間を過ぎることを受診の条件にしないでください。
ASRMの支援資料も、生活への支障や関係の悩み等を相談のきっかけに挙げています。相談は、気持ちや選択肢を整理するためにも使えます。ASRM:不妊のカウンセリングと支援(2023年改訂)
国内の不妊・不育の相談の案内や、厚生労働省のこころの相談窓口も確認できます。本人の安全を保てない、自分を傷つけそう等の切迫した状況では救急へ助けを求めます。
出典と確認日
2026年10月31日に、2017年の筆記開示試験の原著抄録と、ASRM・国内の支援案内の採用節を照合しました。試験全文やすべての筆記研究のレビュー、個人の効果を確認したものではありません。診療や心理支援を提供する施設の体験談として説明していません。
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免責事項
この記事は一般的な情報提供です。個別の診断・治療や心理的な支援に代わるものではありません。症状や本人の状況に応じた判断は、診療先等へ相談してください。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。