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不妊治療中の転職|治療との両立

2026/4/19

不妊治療中の転職|治療との両立

不妊治療中の転職|治療との両立を実現するための完全ガイド

不妊治療中に転職を考えること自体は珍しくありません。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、不妊治療経験者の約16%が治療を理由に離職または転職を検討したと回答しています。「今の職場では通院できない」「理解してもらえない」という切実な状況から転職を選ぶ人は確実に増えています。

しかし転職には、保険適用の継続可否・休職制度の引き継ぎ・採用面接での開示リスクなど、不妊治療特有の複雑な問題が絡み合います。この記事では、転職のタイミング・職場探しの基準・面接での具体的な伝え方を、数字と手順を使って解説します。

この記事のポイント(要約)

  • 不妊治療と仕事の両立を妨げる最大の壁は「通院回数」——体外受精の場合、採卵周期だけで月4〜8回の平日通院が必要とされています
  • 転職の最適タイミングは「胚移植後の判定日を終えてから」が基本。治療の区切りを作ることで入社後のスケジュール管理が格段に楽になります
  • 不妊治療への理解がある企業の見分け方:「不妊治療支援制度」明記・看護休暇の時間単位取得可・フレックスタイム制の3点が最低条件
  • 面接での開示は義務ではありません。ただし入社後に発覚した場合のリスクを踏まえた戦略的判断が求められます
  • 転職先が決まる前に退職すると、国民健康保険への切り替えにより不妊治療の自己負担額が急増するリスクがあります

不妊治療中に転職を考える人が急増している背景とは

不妊治療中に転職を検討する人が増えている背景には、体外受精の保険適用(2022年4月)による治療のロングタームカップルの増加と、職場側の制度整備が追いついていない現実があります。厚生労働省「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」(2021年)によると、不妊治療経験者のうち約34%が「仕事との両立が難しかった」と回答し、そのうち約16%が実際に離職しています。

離職・転職を選ぶ理由の上位は次の通りです。

  • 突発的な通院が認められない:採卵周期では卵胞の発育状況によって翌日急きょ通院が必要になるケースが頻繁に発生します
  • 半休・時間休が使えない:午前中だけ通院して午後から出勤したいが、半日単位の有休しか取れない職場では現実的に対応できません
  • 管理職・同僚への説明が精神的に重い:毎月の通院理由を問われ続けることが心理的消耗につながるという報告があります
  • キャリアへの影響が見えない:治療が長期化するにつれて昇進・昇格の機会を逃す不安が蓄積します

転職はこれらの問題をリセットできる手段ですが、同時に新たなリスクも生まれます。転職か継続かを判断するためにも、まず現状の両立困難の構造を正確に把握することが必要です。

体外受精中の通院スケジュールはなぜ仕事と合わないのか

体外受精の採卵周期では、月経開始から採卵まで平均10〜14日間で4〜8回の通院が必要です。これらは原則として「平日の午前中」に集中し、かつ卵胞サイズにより翌日急きょ追加受診が発生するため、事前の休暇取得計画が立てにくい構造になっています。

通院タイミングを治療ステップ別に整理すると、以下のようになります。

治療ステップ

通院回数(目安)

時間帯

予測可能性

排卵誘発注射・採血

3〜5回/周期

朝7〜9時

低(卵胞次第)

採卵

1回/周期

午前中(4〜5時間拘束)

前日に確定

胚移植

1〜2回/周期

午前〜午後

数日前に確定

判定(HCG採血)

1〜2回/周期

朝8〜10時

日程は固定可

タイミング療法や人工授精(IUI)の場合は月2〜4回程度に抑えられますが、体外受精(IVF)・顕微授精(ICSI)に進むと月の平日稼働日の20〜30%が通院に充てられる計算になります。この構造を理解しないまま転職先を選ぶと、新しい職場でも同じ問題が繰り返されます。

転職のベストタイミングはいつか:治療ステージ別の判断基準

不妊治療中の転職に最適なタイミングは「治療の区切り」——具体的には胚移植後の妊娠判定日を終えた直後です。採卵直後や移植前の転職は、ホルモン投与スケジュールと入社時期のズレが生じやすく、治療の継続自体が困難になるリスクがあります。

治療ステージ別の転職推奨度を以下に示します。

治療ステージ

転職推奨度

理由

タイミング療法・IUI中

△(条件次第)

通院回数が少なく、有休でカバーしやすい。新職場への影響は最小限

採卵周期直前・中

×(避ける)

入社直後に頻回通院が発生。試用期間中の職場理解を得るのが困難

胚凍結済み・移植前

○(推奨)

凍結胚があれば次周期の移植まで数ヶ月空けられる。転職活動・入社準備の時間を確保しやすい

移植後・判定待ち中

×(避ける)

結果次第で緊急の対応(継続観察/流産処置)が必要。入社直後のリスクが高い

判定日終了後(陰性確認後)

◎(最推奨)

次の採卵周期まで1〜3ヶ月の猶予が生まれる。精神的にも新環境へのリセットがしやすい

なお、体外受精の保険適用は「回数カウント」がされるため、転職で治療を中断すると同じクリニックで再開する場合でも経過が引き継がれます。一方で保険適用の上限(43歳未満)は年齢で切られるため、年齢が迫っている場合は転職のタイミングよりも治療の継続を優先すべき場合があります。

不妊治療に理解がある職場の見分け方:求人票・面接で確認すべき5つの項目

不妊治療に理解がある職場を選ぶ際、求人票と面接で確認すべき最低限の指標は5つあります。制度の有無だけでなく「実際に使える文化かどうか」を見極めることが重要です。

具体的なチェック項目は以下の通りです。

  1. 不妊治療支援制度の明文化:就業規則・福利厚生ページに「不妊治療休暇」「特定不妊治療支援」の記載があるか。記載がなくても「妊活支援」「ファミリーサポート」の項目があれば交渉余地があります
  2. 時間単位の有休取得が可能:労働基準法は5日まで時間単位有休を認めていますが、導入していない企業も多数あります。採血や注射のために「2時間だけ」取得できるかどうかが現実的な両立を左右します
  3. フレックスタイム制またはリモートワーク可:コアタイムが10〜15時のフレックスであれば、朝7〜9時の通院後に出社するスタイルが成立します
  4. 女性管理職比率・産休育休取得実績:厚生労働省の「えるぼし認定」「くるみん認定」取得企業は制度の実態運用が確認されています。認定マークは求人票や企業サイトに記載されています
  5. 人員に余裕があるか(欠員補充型か増員型か):欠員補充型の求人は「いなくなった穴を埋める」採用のため、急な休みへの耐性が低い傾向があります。事業拡大による増員採用かどうかを面接で確認します

「えるぼし認定」企業は2024年3月時点で全国約1,800社あります(厚生労働省データベース参照)。検索は厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」(https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/)から行えます。

面接での開示はすべきか:治療状況の伝え方と法的な立場

不妊治療中であることを採用面接で伝える法的義務はありません。妊娠・出産・不妊治療に関する情報は、男女雇用機会均等法(第5条)が定める採用差別禁止の保護対象に含まれる性質の個人情報です。ただし「伝えない」という選択にも入社後のリスクが伴うため、状況に応じた戦略的判断が求められます。

開示パターン別の考え方を整理します。

パターン

メリット

デメリット・リスク

A. 完全非開示

採用への影響ゼロ。入社前の心理的負担なし

入社後に通院頻度が発覚した際、「最初に言ってほしかった」という信頼毀損リスク

B. 抽象的に伝える

「定期的な通院がある」とだけ伝えることで、過度な詮索を防ぎながら配慮を引き出せる

病気だと誤解される可能性。「どんな通院ですか」と聞かれた場合の対応を事前に準備する必要あり

C. 内定後・入社前に開示

採用への直接的な影響を避けつつ、入社前に環境整備の相談ができる

内定取り消しの法的リスクは低いが、ゼロではない(内定取り消しは客観的合理的理由が必要)

D. 面接時に明示

ミスマッチを防げる。企業側の理解度を見極めるリトマス紙になる

書類選考通過率・面接通過率への影響リスクあり

現実的に最もリスクが低いのは「B. 抽象的に伝えるか、C. 内定後開示」の組み合わせです。「月に数回、定期的な通院があります。フレックスや時間有休を活用させていただければ、業務への影響は最小化できます」という形で伝えると、具体的な病名を出さずに配慮を求めることができます。

退職タイミングと健康保険の落とし穴:転職前に必ず確認すること

転職先が決まる前に現在の職場を退職すると、健康保険が「社会保険(健康保険組合)」から「国民健康保険」に切り替わります。この切り替えが不妊治療の費用に直結するため、退職タイミングは慎重に判断する必要があります。

保険切り替えによる費用への影響は次の通りです。

  • 体外受精の保険適用は継続される:国民健康保険でも体外受精の保険適用(3割負担)は維持されます。クリニックを変更しなければ治療自体は継続可能です
  • 高額療養費制度の月またぎリスク:体外受精1周期の費用は採卵を含めると20〜30万円(保険適用後の3割)になるケースがあります。月の途中で保険が切り替わると、その月の高額療養費の上限がリセットされ、自己負担が増加します
  • 任意継続保険の活用:退職後20日以内に手続きすれば、前職の健康保険を最大2年間継続できます(任意継続被保険者制度)。保険料は労使折半から全額自己負担になりますが、月収が高かった人は国保より安くなるケースがあります

在職中に転職活動を行い、転職先の内定を確認してから退職する「在職中転職」が最も安全です。退職から次の就職までの空白期間が1ヶ月以内に収まれば、保険料の二重払いも最小化されます。

転職後の試用期間中に治療を続けるための具体的な対処法

転職後の試用期間(多くは3〜6ヶ月)は、有給休暇が付与される前の期間であり、急な通院が発生した場合の対処が難しくなります。この期間をどう乗り切るかが、転職後の治療継続の成否を左右します。

試用期間中に実行できる具体策は以下の5つです。

  1. 試用期間中は治療ステップを下げる(可能であれば):採卵周期のような高頻度通院が必要なステップを試用期間終了後にずらすことができれば、入社直後の急な休みのリスクを大幅に下げられます。主治医と相談し、凍結胚があれば移植を1〜2周期先送りすることも選択肢です
  2. 早朝通院可能なクリニックに変更する:診療開始が7時〜8時台のクリニック(例:はるねクリニック銀座〔7:30〕、虎の門病院〔8:00〕、加藤レディスクリニック〔7:00〕等)では、通院後9〜10時台の出社が可能です
  3. 入社時に「月数回の定期受診がある」と直属上司に伝える:試用期間中であっても、口頭での事前通知があれば急な欠席の際の信頼毀損が軽減されます
  4. 欠勤ではなく「遅刻・早退」として処理できるよう環境整備する:1日休むより2時間遅刻・早退の方が業務への影響が少なく、上司への説明も容易になります
  5. 有給付与前の「特別休暇」交渉:試用期間中でも特別休暇(無給または有給)の付与交渉は可能です。「不妊治療支援休暇」を設けている企業では試用期間の除外規定がないケースもあります

加藤レディスクリニック(東京・新宿)は診療開始が7:00と全国でも有数の早朝対応クリニックとして知られています。また、オンライン診療を一部対応しているクリニック(自宅での注射指導・問診等)を組み合わせることで、通院回数を月1〜2回削減できるケースもあります。

よくある質問

不妊治療中に転職活動を始めるのはキャリア的に不利ですか?

治療中であることが採用の不利要因になるかどうかは、開示しなければ面接官には判断できません。転職活動の成否は、スキルと職務経歴の適合度によります。転職理由として「より柔軟な働き方ができる環境を求めて」と伝えることは正当であり、それ自体が不利要因になることはありません。ただし、採卵周期直中などは体力的・精神的な消耗が大きく、面接のパフォーマンスが落ちやすいという現実はあります。

転職先に不妊治療のことをいつ伝えるのがベストですか?

内定後・入社前が最もリスクが低い開示タイミングとされています。内定取り消しには客観的合理的な理由が必要であり、不妊治療を理由にした取り消しは男女雇用機会均等法に抵触する可能性があります。伝え方は「月に数回、定期的な通院があります。時間有休やフレックスを活用して対応します」というシンプルな説明が推奨されます。

体外受精の保険適用回数は転職しても引き継がれますか?

保険適用の回数カウント(43歳未満・採卵6回まで等)は健康保険の種類(社保・国保)に関わらず、個人に紐づいています。転職による健康保険の切り替えがあっても、既に使用した回数はリセットされません。ただし保険者(会社の健保組合 vs 国民健康保険)が変わることによる手続き上の確認は必要です。

転職後にすぐ産休・育休を取ることはできますか?

育児休業の取得資格は「同一事業主に1年以上継続して雇用されていること」が原則でしたが、2022年の育児・介護休業法改正により、労使協定で入社1年未満の除外を定めない限り取得できるようになりました。転職後1年以内でも育休が取れる企業は増えていますが、就業規則で「入社1年以上」の条件が残っている企業も存在します。転職先への確認が必要です。

転職せずに今の職場と交渉する方法はありますか?

転職より先に検討すべき選択肢として、以下の3つが挙げられます。(1)「不妊治療と仕事の両立のためのハンドブック」(厚生労働省)を参考に、上司・人事部門へ時間単位有休の導入を要望する、(2)産業医・社内相談窓口を経由して合理的配慮の申請を行う、(3)部署異動(通院しやすい勤務地・シフト変更)を申し出る。転職は最終手段として、まず現職での環境改善を試みることが推奨されます。

転職後に不妊治療を続けるには、どのくらいの有休日数が必要ですか?

体外受精の場合、採卵周期で4〜8日、移植周期で2〜3日の通院対応が必要です。年間1〜2周期行うとすると、6〜22日程度の通院対応日が発生します。法定の年次有給休暇は入社6ヶ月で10日付与されます。全日有休での対応は困難なため、時間単位有休(2〜3時間/回)が取れる企業が事実上の必須条件となります。

パートナーの転職と自分の転職、どちらが先がよいですか?

二人が同時に転職活動を行うことは精神的・経済的な負担が集中するため避けることが推奨されます。一般的には、通院頻度が高い(主に女性側)の雇用環境を先に整えることが優先されます。ただし収入の安定という観点では、パートナーが先に転職・収入を安定させた後に、もう一方が転職するという順序も現実的な選択肢です。

不妊治療中の転職で使える公的支援はありますか?

転職自体への直接的な公的支援はありませんが、関連する制度として以下があります。(1)厚生労働省「不妊治療連絡カード」——通院のための休暇取得を職場に申し出る際に活用できるカード(主治医に記入を依頼)、(2)ハローワーク「マザーズハローワーク」——妊娠・育児中の求職者向けの専門窓口で、不妊治療中の求職相談にも対応しているケースがあります、(3)各都道府県の「両立支援コーナー」——社会保険労務士によるアドバイスが無料で受けられます。

まとめ

不妊治療中の転職は、正しいタイミングと職場選びの基準を押さえれば、治療の継続と新しいキャリアを両立させることができます。

この記事で解説した行動ステップを整理します。

  1. 今の職場での両立困難の原因を具体化する:「なんとなく辛い」ではなく「月○回の通院が取れない」という数字で整理する
  2. 転職か現職交渉かを判断する:時間単位有休の導入交渉・部署異動・産業医相談を試みてから転職活動を開始する
  3. 転職のタイミングは「胚移植後の判定日終了後」を基本とする:凍結胚がある場合は1〜3ヶ月の猶予が作れます
  4. 求人票で「時間単位有休・フレックス・不妊治療支援制度」の3点を確認する:えるぼし認定・くるみん認定を目安にする
  5. 在職中に転職活動を完結させる:保険の空白期間と高額療養費リセットのリスクを避ける
  6. 開示は内定後・入社前が最もリスクが低い:「月数回の定期通院あり・時間有休で対応」という伝え方を準備する

不妊治療は平均的に2〜4年かかるとされています(日本産科婦人科学会データ)。この期間を乗り越えるには、職場環境が与える精神的負荷を下げることが、治療成績にも影響します。転職はゴールではなく、治療を続けるための環境整備の手段です。自分の状況に合った判断を、主治医・パートナー・そして必要であれば社会保険労務士にも相談しながら進めてください。

不妊治療中の働き方について、さらに詳しい情報は当メディアの関連記事でも解説しています。通院スケジュールの組み立て方や、職場への伝え方のテンプレートについては、専門の婦人科・生殖医療クリニックへの相談もあわせてご活用ください。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/5/1