不妊治療中の転職を考えるときは、治療と新しい仕事の予定を並べ、どの条件があれば働けるかを整理します。「陰性判定の直後が最適」「現職との交渉をすべて試してから退職」と、全員に同じ順番を勧めることはできません。体調、職場の負担、収入、治療の希望を合わせて判断します。
転職前に、確認する相手と内容を分けます
| 確認先 | 確認したいこと |
|---|---|
| 治療先 | 通院が決まる時期、休養や付き添いの必要、予定を変える場合の影響 |
| 勤務先・転職先 | 入社直後から使える休暇、時差出勤や勤務変更、申請先・必要書類 |
| 人事・相談担当者 | 治療情報を伝える必要性と範囲、誰に共有されるか、連絡方法 |
| 現在と次の健康保険の窓口 | 資格の切替日、保険料、給付や高額療養費の扱い、必要手続き |
通院の回数や時刻を、一般表だけで固定しません
通院の日数・間隔・所要時間は、治療方法、薬への反応、検査結果、施設の運用などで変わります。全員「採卵周期は4〜8回、平日の朝7〜9時」と決めると、必要な調整を誤るおそれがあります。今の治療先で、事前に分かる予定と直前に決まる予定を分けて聞きましょう。
厚生労働省の両立支援資料も、通院の目安は年齢や個人の状況で異なること、突発的な休みが必要になることを説明しています。企業ごとに利用できる制度を確認し、診療時間の早さだけで転院や治療の先送りを決めないでください。厚生労働省:不妊治療と仕事との両立支援
採卵や移植の予定を変えたい場合も、治療先に体調・年齢・処方・通院の見通しを確認します。判定日を終えれば必ず1〜3か月の猶予が生まれる、試用期間中は治療の段階を下げればよい、と保証することはできません。
求人票だけでなく、入社直後の制度の適用を確認します
- 休暇の対象と付与日、試用期間中の扱い、有給か無給か。
- 半日・時間単位の年休、会社独自の通院休暇、休職制度があるか。
- フレックス、時差出勤、在宅勤務、シフト変更を実際に利用できる職種・条件。
- 急な受診時の連絡先、申請期限、業務の引き継ぎ方法。
- 制度利用や健康の相談に対応する担当者と、情報の管理方法。
法定の年次有給休暇は、原則として入社から6か月の継続勤務と全労働日の8割以上の出勤などが条件です。勤務日数・時間によって付与日数も異なり、会社が前倒しで付与する場合もあります。「試用期間が終われば自動的に有休が出る」とは限りません。厚生労働省:年次有給休暇の条件
時間単位年休は、労使協定により年5日以内の範囲で設ける制度です。すべての企業で当然に使えるわけではなく、半日休暇など他の方法も含めて確認します。厚生労働省:時間単位の年休と労使協定
「くるみんプラス」などは不妊治療との両立支援に関する認定ですが、認定の有無だけで希望する働き方が必ず実現するとは言えません。具体的な制度と利用条件を見ます。通常のくるみん・えるぼし認定を、不妊治療支援の同じ認定として扱わないでください。
治療情報は、伝える目的・相手・範囲を考えます
治療情報を伝える時期によって採用上の影響がどう変わるかは、一律に予測できません。相談したい勤務上の条件と、詳しい診断・治療内容を分け、何のためにどこまで伝えるかを本人が検討します。情報が誰まで共有されるかも、相談前に確認して構いません。
厚生労働省の公正採用の基本は、本人の適性・能力に基づく選考を求め、合理的・客観的な必要性のない採用時の健康診断などに注意を促しています。治療の事実だけで採用や内定取消しの適法性が一律に決まるとする法律解説はしていません。
困った質問や対応があれば、ハローワークや労働局などの相談先に、実際のやり取りを伝えて相談できます。厚生労働省:公正な採用選考の基本
伝え方の編集例は、「通院のため、勤務時間の調整が必要になることがあります。利用できる制度と、直前に受診が決まる場合の連絡方法を確認したいです」です。実際の通院見込みが分からないうちに「業務への影響はありません」と約束する必要はありません。
共有する場合は、不妊治療連絡カードを治療先・勤務先との調整に使えることもあります。厚生労働省:両立サポートハンドブック(掲載7〜10ページ)
退職後の健康保険は、国保だけではありません
次の職場の健康保険に入るまで期間が空く場合は、国民健康保険、前の健康保険の任意継続、家族の健康保険の被扶養者など、条件に応じた選択肢を確認します。退職すれば必ず国保になる、高所得なら任意継続が必ず安い、と決めないでください。
協会けんぽの任意継続は、退職日まで継続して2か月以上の被保険者期間があり、退職日の翌日から20日以内に手続きするなどの条件があります。郵送は期限内必着で、休日の場合の扱いも案内されています。
加入していた保険者が違う場合は、その窓口へ確認してください。保険料・給付・加入条件を比較して選びます。協会けんぽ:退職後の健康保険と任意継続
高額療養費は資格の切替日や保険者、所得区分などで扱いが変わり得ます。「月途中で必ず全額リセット」と一括りにせず、切替前後の窓口へ確認します。保険資格の変更を理由に、採卵や移植を同じ月へ詰めたり、薬を自己変更したりしないでください。
休業できる条件と、出産・育児などの給付を受ける条件も別なので、将来の希望がある場合は人事・各給付の窓口で確認します。
自分に必要な条件を、優先順に並べます
今の職場の調整、転職、休養など、どの選択が合うかは人によって違います。治療の回数だけでなく、体調、通勤、職場での負担、収入の見通し、本人とパートナーの希望を並べて考えてください。つらい職場に、交渉をすべて終えるまで残る義務を課すものではありません。
まず確認が必要なことを1つ決め、治療先・勤務先・保険者など対応する窓口へ相談すると、判断に必要な条件が整理しやすくなります。本人の努力や気持ちの整え方だけで、職場の課題や治療成績が変わると説明する記事ではありません。
出典と確認日
2026年10月26日に、厚生労働省の両立支援・時間単位年休・年休条件・公正採用と、協会けんぽの退職後の案内を確認しました。ハンドブックの採用7〜10ページは画像で確認しています。個別の採用・給付の可否を判断する法律相談や、医師による本記事の個別監修ではありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。