
不妊治療と労働基準法の関係を正しく理解することで、仕事を続けながら治療を受ける権利を守ることができます。2022年の保険適用以降、厚生労働省は企業向けガイドラインを整備していますが、法的な権利と企業の努力義務の違いを正確に知ることが重要です。
この記事のポイント
- 不妊治療に関する労働基準法・雇用機会均等法の適用
- 休暇取得・勤務調整の権利と企業の義務の違い
- 職場でのトラブル時に活用できる相談窓口
不妊治療に関わる主要な法律の整理
不妊治療を受けながら働く権利を守る法律として、主に3つの法律が関連します。ただし、日本には不妊治療専用の休暇を労働者に付与することを企業に義務付ける法律はなく、多くは「企業の努力義務」にとどまっています。
法律 | 関連する内容 |
|---|---|
労働基準法 | 年次有給休暇の取得(理由を問わず取得可能) |
男女雇用機会均等法 | 妊娠・出産・不妊治療を理由とした不利益取り扱いの禁止 |
育児・介護休業法 | 妊娠・出産後の休業制度(治療段階には適用外) |
年次有給休暇を活用する権利
年次有給休暇は理由を問わず取得できる権利です(労働基準法第39条)。「不妊治療のため休みたい」という理由の開示は不要で、「私用のため」で問題ありません。ただし、時季変更権(事業の正常な運営を妨げる場合)が行使される場合は、日程調整を求められることがあります。
企業が整備すべき制度(努力義務)
厚生労働省「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのための支援ガイドライン」(2021年)では、企業に以下の取り組みを求めています(義務ではなく努力義務)。
- 不妊治療休暇制度の整備
- 短時間勤務・フレックスタイムの利用可能化
- 職場の理解促進(管理職研修等)
- 相談窓口の設置
不利益取り扱いの禁止
不妊治療を理由とした解雇・降格・減給・配置転換等の不利益取り扱いは、男女雇用機会均等法第9条(妊娠・出産・産前産後休業取得等を理由とした不利益取り扱いの禁止)の類推適用が問題になりうるケースがあります。具体的な不利益を受けた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部室(紛争調整委員会)に相談することができます。
職場でのトラブル時の相談先
- 都道府県労働局(雇用環境・均等部室):ハラスメント・不利益取り扱いの相談
- 労働基準監督署:有給休暇取得の妨害等の相談
- 社労士・弁護士:法的判断が必要な場合
- 産業医・産業カウンセラー:職場内での調整
よくある質問
Q. 不妊治療のための有給休暇申請を上司に断られました。
理由を問わない有給休暇取得は法的権利です。繁忙期等を理由とした時季変更はありえますが、申請自体の拒否は違法の可能性があります。労働基準監督署に相談することができます。
Q. 不妊治療中であることを職場に伝えたら、異動させられました。
不妊治療を理由とした不利益な扱いは問題となりうる行為です。証拠(メール・議事録等)を保全した上で、都道府県労働局または弁護士に相談することをお勧めします。
Q. 不妊治療を理由とした特別休暇制度がない会社でも請求できますか?
特別休暇制度がなくても、年次有給休暇は理由なく使えます。また、制度の整備を求めることは労働者の権利です。
Q. 採卵日は事前に決められないため、当日急に休む必要があります。対処法は?
採卵は卵胞の状態により日程変動があることを、事前に上司に医療的な説明をしておくことが有効です。詳細は話さなくてもいいですが、「急な休みが必要になる可能性がある治療」という説明で理解を求めることができます。
Q. 不妊治療中の同僚に対して職場でどう接するべきですか?
「子どもはまだ?」という質問を避け、治療中であることを知っても詮索しないことが基本です。必要なサポートがあれば本人に確認してください。
まとめ
不妊治療と労働基準法の関係では、有給休暇取得の権利と不利益取り扱い禁止が主要な保護になります。企業の不妊治療支援制度は努力義務のため充実度に差がありますが、法的に守られている権利を正確に知ることが重要です。職場でのトラブル時は労働局・弁護士への相談も選択肢です。
※本記事は情報提供を目的としており、法律的な判断を行うものではありません。個別の法的問題については専門家にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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