
がんサバイバーにとって妊孕性温存は、治療開始前に知っておくべき重要な選択肢です。がん治療(化学療法・放射線療法)による卵巣・精巣へのダメージを最小化するために、治療前に卵子・胚・精子の凍結保存を行う専門クリニックが全国に存在します。
この記事のポイント
- 妊孕性温存が必要なタイミングとその理由
- 対応クリニックの選び方と確認すべきポイント
- 費用目安と公的助成金制度
- がん治療と妊孕性温存の両立に関するQ&A
- 受診前の準備と担当医との連携方法
がんサバイバーの妊孕性温存:基本情報
対象 | がん治療前に妊娠の可能性を残したい方(男女共) |
|---|---|
主な温存方法(女性) | 胚凍結・卵子凍結・卵巣組織凍結 |
主な温存方法(男性) | 精子凍結 |
実施タイミング | がん治療(化学療法・放射線)開始前(緊急性が高い) |
費用目安 | 卵子凍結:20〜50万円程度 / 胚凍結:30〜60万円程度 |
公的助成 | 国の助成制度あり(2021年度〜)、自治体による上乗せあり |
問い合わせ先 | がん診療連携拠点病院の相談支援センター |
診療内容と特徴
妊孕性温存に対応するクリニックでは、がん治療チームと生殖医療チームが連携するフローが整備されています。時間的制約が厳しいケースにも対応できる体制が重要です。
- 緊急採卵・卵子凍結:がん診断後、化学療法開始まで2〜4週間しかない場合でも、緊急の卵巣刺激・採卵を行う体制を持つクリニックがあります。月経周期を問わずランダムスタートで刺激できるプロトコルが活用されています。
- 胚(受精卵)凍結:パートナーがいる場合は、採取した卵子とパートナーの精子を受精させた胚(受精卵)を凍結保存する方法が成功率が高く、標準的な選択肢です。
- 卵巣組織凍結:卵巣の一部を採取・凍結し、がん治療後に体内に戻す方法です。小児・思春期の女性や時間的余裕がない場合に選択肢となりますが、一部の血液系がんでは再移植に慎重な判断が必要です。
- 精子凍結(男性):男性のがん患者では、化学療法前に精子を採取・凍結しておくことで、将来の父性を保つことができます。マスターベーション採精が困難な場合は外科的採取も可能です。
- 小児・思春期対応:15歳以下の小児がん患者の妊孕性温存は、成人とは異なるプロトコルが必要です。小児腫瘍科と生殖医療の両方に精通したクリニックを選ぶことが重要です。
口コミ・評判の傾向
妊孕性温存を経験したがんサバイバーからは以下のような声が聞かれます。
- 「がん治療の合間に急いで卵子凍結した。クリニックが迅速に対応してくれて助かった」
- 「主治医からの紹介でスムーズに連携が取れ、がん治療を遅らせずに温存できた」
- 「費用が思った以上にかかったが、助成金で一部補填できた」
- 「凍結後のフォローが丁寧で、がん治療中も定期的に状況を確認してもらえた」
課題として「紹介先の生殖医療クリニックが近くになく、体調が悪い中での通院が大変だった」「がん治療優先で温存の説明が十分でなかった」といった声もあります。がん診療拠点病院と生殖医療クリニックの連携体制を事前に確認することが重要です。
費用目安と助成制度
項目 | 費用目安(自費) |
|---|---|
卵子凍結(採卵〜凍結) | 20〜50万円程度 |
胚凍結(採卵〜凍結) | 30〜60万円程度 |
凍結保存(年間) | 3〜5万円/年程度 |
精子凍結 | 3〜10万円程度 |
卵巣組織凍結 | 20〜40万円程度(施設により異なる) |
公的助成制度:2021年度から国が「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」として助成を開始しました。対象年齢・がん種・温存方法によって条件が異なります。都道府県の担当窓口または各がん診療連携拠点病院の相談支援センターにご確認ください。
受診する際のポイント
- がん主治医に早めに相談する:妊孕性温存は化学療法・放射線療法の開始前に行う必要があります。がんの診断を受けたら、治療方針の説明の場で「将来妊娠の可能性を残したい」という希望を伝えてください。
- がん診療連携拠点病院の相談支援センターを活用する:全国のがん診療拠点病院には無料の相談支援センターがあり、妊孕性温存に対応する生殖医療クリニックの紹介を受けられます。
- 連携クリニックの実績を確認する:妊孕性温存の実績件数・緊急対応の可否・保存方法の選択肢(胚凍結・卵子凍結・卵巣組織凍結)を事前に確認します。
- 助成金の申請条件を事前に調べる:国・都道府県の助成金には年齢・がん種・温存方法などの条件があります。事前に確認し、必要書類を揃えてから申請してください。
- 長期的な保存計画を立てる:凍結保存は年間費用が発生します。がん治療終了後、実際に使用するまでの期間を考慮した長期的な計画を立てておくことが重要です。
アクセス・連絡先
妊孕性温存に対応するクリニックを探す方法:
- 日本がん・生殖医療学会:妊孕性温存に取り組む施設リストを公開しています(公式サイトで検索可能)
- がん診療連携拠点病院 相談支援センター:全国どこからでも最寄りの拠点病院に相談可能。紹介先の生殖医療クリニックを案内してもらえます
- 各都道府県の「妊孕性温存療法助成事業」担当窓口:助成申請と同時にクリニック情報を得られます
よくある質問
Q. がん治療中でも妊孕性温存はできますか?
原則として、がん治療(特に化学療法・放射線)開始前に行う必要があります。治療開始後は卵巣や精巣へのダメージが進むため、診断後できる限り早い段階で担当医に相談することが重要です。
Q. どのがんの方が妊孕性温存を検討すべきですか?
乳がん・リンパ腫・白血病・卵巣がん・子宮頸がんなど、妊孕性に影響する治療を受ける可能性があるすべての方が対象になり得ます。がん種や治療内容によってリスクが異なるため、主治医と相談して判断します。
Q. 卵子凍結と胚凍結の違いは何ですか?
卵子凍結は未受精の状態で保存するため、パートナーがいない場合や将来のパートナーに選択の余地を残したい場合に適しています。胚凍結はパートナーの精子と受精させた状態で保存するため、妊娠率が高い傾向があります。
Q. 助成金はいくら受けられますか?
国の補助上限は温存療法の種類によって異なり、胚・卵子凍結で上限25〜35万円程度(施設や実施年度により変動)が目安です。都道府県・市区町村の上乗せがある場合もあります。最新情報は担当窓口にご確認ください。
Q. がん治療終了後、いつ頃妊活を再開できますか?
がん治療の種類・強度によって異なりますが、化学療法終了後一般的に6ヶ月〜2年程度の経過観察期間を経てから妊活を検討するケースが多いです。担当の腫瘍内科医と生殖医療専門医の両方と相談したうえで判断してください。
Q. 凍結した卵子・胚はいつまで保存できますか?
法的な保存期間の上限は設けられていませんが、多くのクリニックでは年間保管料が発生します。長期保存の計画・費用について事前にクリニックに確認しておきましょう。
Q. 小児・10代のがん患者の場合はどうすればよいですか?
思春期前の女児では卵子凍結が難しいため、卵巣組織凍結が選択肢となります。小児腫瘍科と生殖医療科の連携が整った施設での相談が必要です。日本がん・生殖医療学会の認定施設リストが参考になります。
Q. パートナーがいない場合でも妊孕性温存できますか?
独身・パートナーなしの場合も、卵子凍結・精子凍結は可能です。将来の選択肢を残すために、まず卵子(または精子)を凍結保存しておくことができます。
まとめ
がんサバイバーの妊孕性温存は、がん治療を乗り越えた後の人生設計を守るための重要な選択肢です。治療前の限られた時間の中で意思決定する必要があるため、がんの診断を受けたら早期に主治医に相談することが最も重要なアクションです。
妊孕性温存に対応するクリニックを選ぶ際は、緊急対応の可否・温存方法の選択肢・がん診療チームとの連携体制を確認してください。国・自治体の助成制度も活用することで、経済的負担を抑えることができます。
治療後の妊活開始のタイミングについては、腫瘍内科医と生殖医療専門医の両方と相談しながら、身体の回復状況に合わせて判断することが大切です。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定のクリニックや治療法を推奨するものではありません。掲載情報は執筆時点のものであり、変更される場合があります。診療内容・費用・予約方法については、必ず各クリニックに直接お問い合わせください。不妊治療に関する医療的判断は、担当医師にご相談ください。
この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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