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妊娠中の甘いもの・砂糖の摂りすぎリスクと適量

2026/4/19

妊娠中の甘いもの・砂糖の摂りすぎリスクと適量

妊娠中の甘いもの・砂糖の摂りすぎリスクと1日の適量

妊娠中の甘いものや砂糖の摂りすぎは、胎児と母体の両方にリスクをもたらします。「少しなら大丈夫」と思いがちですが、妊娠中は血糖コントロールの仕組みが大きく変化するため、非妊娠時よりも血糖値が上がりやすい状態です。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準2020年版」では、砂糖などの添加糖の上限は明示されていませんが、WHO(世界保健機関)は全年代を対象に、遊離糖類(添加糖+フルーツジュース等)をエネルギー摂取量の10%未満(理想は5%未満)に抑えることを強く推奨しています。妊娠中のエネルギー付加量を考慮すると、1日あたりの砂糖の目安は約25〜50gが上限の目安です。

この記事では、砂糖が母体・胎児に与える科学的な影響から、妊娠糖尿病との関連、安全な甘味料の選び方、間食の具体的な置き換え例まで、産婦人科の知見をもとに整理します。

【この記事のポイント】

  • WHO基準の遊離糖類は1日エネルギーの10%未満(目安25〜50g)。妊娠中は特に過剰摂取を避けるべき
  • 添加糖の摂りすぎは妊娠糖尿病・過体重児・巨大児リスクと有意に関連することが複数の前向きコホート研究で示されている
  • スクラロースやアセスルファムKは妊婦を対象とした安全性データが限定的なため、過剰摂取は避けることが望ましい
  • 妊娠糖尿病スクリーニング(50gGCT)は妊娠24〜28週に実施が標準。リスク因子があれば初期から行う場合もある

妊娠中に砂糖を摂りすぎると何が起きるか——血糖スパイクと胎盤への影響

砂糖(特にショ糖・ブドウ糖・果糖)を過剰に摂取すると、食後の血糖値が急激に上昇し「血糖スパイク」が繰り返される。胎盤を通じて胎児側の血糖値も上昇するため、胎児の膵臓が過剰なインスリンを分泌し、巨大児・脂肪蓄積・低血糖リスクにつながる。

血糖スパイクが繰り返されるメカニズム

妊娠中期以降、胎盤から分泌されるhPL(ヒト胎盤性ラクトゲン)やプロゲステロンがインスリン抵抗性を高めます。この生理的変化により、同じ量の糖質を摂取しても非妊娠時より血糖値が高く・長く上昇します。

血糖スパイクが続くと、膵β細胞が疲弊してインスリン分泌能が低下し、妊娠糖尿病への移行リスクが上がります。また、酸化ストレスの増加により胎盤の血流が悪化するとの報告もあります。

胎児への直接的な影響

  • 巨大児(出生体重4,000g超):母体の高血糖→胎児高血糖→胎児インスリン過剰分泌→脂肪蓄積 という連鎖
  • 新生児低血糖:出生後、胎盤からの糖の供給が止まるが胎児のインスリン分泌は続くため低血糖を起こしやすい
  • 小児肥満・2型糖尿病リスク:胎内環境が子どもの代謝プログラムに影響することがDOHaD(生活習慣病胎児期起源説)研究で示されている

母体への影響

  • 過剰な体重増加(妊娠高血圧症候群のリスク因子)
  • 虫歯・歯周病の悪化(妊娠中は唾液の緩衝能が低下)
  • 分娩後の産後糖尿病移行リスク上昇

甘いものと妊娠糖尿病(GDM)の関連——エビデンスが示す摂取量と発症率

加糖飲料(清涼飲料水・フルーツジュース)の摂取頻度が高いほど妊娠糖尿病(GDM)の発症リスクが上昇するという複数の前向きコホート研究がある。一方、果物そのものの摂取は繊維質の緩衝効果によりリスク上昇との関連は弱い。

主要な研究知見

研究・出典

対象

主な知見

Nurses' Health Study II(米国、2013年)

13,475人の妊婦

加糖飲料を1日1杯以上飲む群は、ほとんど飲まない群に比べGDMリスクが約22%高い

Zhang et al., Am J Clin Nutr(2016年)

メタ解析

食事性グリセミック指数(GI)が高いほどGDM発症オッズが有意に上昇(OR 1.27)

日本産科婦人科学会 GDM有病率調査(2021年)

日本人妊婦

GDM有病率は7.3%。肥満妊婦での発症率は約2倍以上

特に注意すべき食品・飲料

  • 加糖清涼飲料水・炭酸飲料:500mlペットボトル1本に砂糖約50〜60gが含まれる製品が多い
  • 市販フルーツジュース(100%表示を含む):果糖が遊離した状態で大量に含まれ、血糖上昇が速い
  • スポーツドリンク:「熱中症対策に」と摂取しがちだが、1本で砂糖20〜30g含む製品も
  • 和菓子・洋菓子の過剰摂取:1個あたりの糖質は大福30〜40g、ショートケーキ40〜50g程度

妊娠中の砂糖の1日適量——WHO基準と日本の食事摂取基準から算出する

WHOは遊離糖類をエネルギー摂取量の10%未満(強い推奨)、5%未満(条件付き推奨)に抑えるよう勧告している。妊娠中期・後期のエネルギー付加量を加味した計算では、1日の砂糖(遊離糖類)の上限目安は約25〜50gとなる。

計算の根拠

妊娠ステージ

推定必要エネルギー(例:30歳・身体活動普通)

遊離糖類10%上限

遊離糖類5%目標

非妊娠時

約2,000kcal

50g

25g

妊娠初期(+50kcal付加)

約2,050kcal

51g

26g

妊娠中期(+250kcal付加)

約2,250kcal

56g

28g

妊娠後期(+450kcal付加)

約2,450kcal

61g

31g

付加量が増えると上限値もわずかに上がりますが、実際には甘い飲料1本で上限を超えることが多いため、「砂糖は1日25g(小さじ約8杯)を目安に、余裕を持って管理する」と考えるのが現実的です。

食品別の砂糖量早見表

食品・飲料

標準量

糖質量(概算)

砂糖25gとの比較

コーラ(炭酸飲料)

350ml缶

約38g

目安の1.5倍超

オレンジジュース(100%)

200ml

約20g

目安の約80%

ショートケーキ

1切れ(100g)

約44g

目安の約1.8倍

大福(白あん)

1個(80g)

約37g

目安の約1.5倍

板チョコ(ミルク)

1/3枚(20g)

約11g

目安の約44%

バナナ

1本(100g)

約21g(果糖含む)

果物は繊維質あり

代替甘味料は妊婦が使っていいか——成分別の安全性評価

人工甘味料(アスパルテーム・スクラロース・アセスルファムK)は日本の食品衛生法で認可されているが、妊婦を対象とした長期安全性データは限定的。天然由来のステビアは比較的安全とされるが、いずれも「甘味料に依存した食習慣」を強化するリスクがある。適量の利用なら許容範囲、乱用は推奨されない。

甘味料の種類別まとめ

甘味料

種類

妊婦への評価

注意点

アスパルテーム

人工(アミノ酸誘導体)

適量は許容(JECFA・EFSA)

フェニルケトン尿症の妊婦は禁忌

スクラロース

人工(塩素化ショ糖)

ヒト研究は限定的

腸内細菌叢への影響を示す研究あり(動物実験中心)

アセスルファムK

人工(カリウム塩)

胎盤通過性が示唆される動物データあり

ヒトへの確定的エビデンスは不十分。過剰摂取を避ける

ステビア

天然(植物由来)

比較的安全とされる

血圧低下作用あり。大量摂取は注意

エリスリトール

糖アルコール(天然)

体内でほぼ代謝されず排泄

大量摂取で下痢の可能性。1日20g程度まで

キシリトール

糖アルコール(天然)

虫歯予防効果あり。適量は安全

多量摂取で下痢。ガム2〜3粒程度が目安

産婦人科医の現実的なアドバイス

「砂糖の代わりに人工甘味料を使えば問題ない」という考え方は、食後の血糖上昇を抑える点では有効ですが、甘みへの欲求自体は満たされないか、むしろ強化されるケースがあります。代替甘味料は「糖分を減らす橋渡し」として短期的に利用しつつ、甘味全体の摂取頻度を下げる方向を目指すのが望ましい使い方です。

妊娠中の間食——砂糖を抑えながら満足感を得る具体的な食品例

妊娠中の間食は「栄養素を補いながら血糖上昇を緩やかにする」視点で選ぶ。おすすめは低GI・高たんぱく・高繊維の食品の組み合わせ。ケーキや清涼飲料水の代わりに、ナッツ+果物・プレーンヨーグルト・小豆系和菓子少量などが現実的な選択肢。

砂糖を抑えた間食の置き換え例

よくある間食(高糖質)

代替案

糖質の差

得られる栄養素

炭酸飲料500ml(糖質50〜60g)

炭酸水+レモン薄切り

▲約55g削減

カロリーほぼゼロ

ショートケーキ(糖質44g)

無糖ヨーグルト150g+ブルーベリー

▲約32g削減

カルシウム・乳酸菌・ビタミンC

チョコクリームパン(糖質40g)

全粒粉クラッカー3枚+クリームチーズ

▲約25g削減

食物繊維・カルシウム

どら焼き1個(糖質50g)

小さい大福1個+緑茶

▲約12g削減

あんこの鉄分・葉酸

市販フルーツジュース(糖質20g)

リンゴ½個+水

▲約10g削減

食物繊維・ビタミンC

間食のタイミングと量の目安

  • 1回の間食の糖質量:15〜20g以下を目安にすると血糖スパイクを抑えやすい
  • 食べるタイミング:昼食と夕食の中間(15時前後)が血糖管理上ベスト。就寝前の糖質摂取は中性脂肪蓄積につながりやすい
  • たんぱく質・脂質と組み合わせる:ナッツ10粒+果物など、血糖値の上昇速度を緩やかにする組み合わせが有効
  • 我慢しすぎない:過度な制限はストレスホルモン上昇を招き逆効果になる場合もある。小さい単位で楽しむ工夫を

妊娠糖尿病スクリーニングの時期と検査内容——見逃してはいけない受診タイミング

日本産科婦人科学会のガイドラインでは、妊娠糖尿病スクリーニングは妊娠24〜28週に50gブドウ糖負荷試験(GCT)を行うことを標準としている。空腹時血糖126mg/dL以上・随時血糖200mg/dL以上の場合は初期段階で確定診断へ移行する。

スクリーニングの流れ

  1. 一次スクリーニング(50gGCT):50gブドウ糖を飲み、1時間後の血糖値を測定。140mg/dL以上で陽性。絶食不要で実施できる
  2. 確定診断(75gOGTT):GCT陽性者が対象。空腹時・1時間後・2時間後の血糖値を測定。以下の1項目でも異常値なら妊娠糖尿病と診断

測定時点

妊娠糖尿病の診断基準値

空腹時

92mg/dL以上

1時間後

180mg/dL以上

2時間後

153mg/dL以上

早期スクリーニングが必要なリスク因子

以下に当てはまる場合は初回妊婦健診(妊娠10週前後)から血糖検査が行われるケースがあります。かかりつけの産婦人科医に確認してください。

  • BMI 25以上(妊娠前)
  • 家族(一親等)に2型糖尿病患者がいる
  • 以前の妊娠で妊娠糖尿病と診断された
  • 過去に巨大児(4,000g超)を出産した
  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)がある
  • 35歳以上の高齢妊婦

診断後の管理方針

妊娠糖尿病と診断されても、多くの場合は食事療法と適度な運動で良好な血糖コントロールが可能です。食事療法で目標血糖値に達しない場合はインスリン注射が導入されますが、「一生インスリンが必要」にはなりません。産後は多くの場合、血糖値が正常化します。

よくある質問

Q. 妊娠中、チョコレートは食べてもいいですか?

少量であれば問題ありません。板チョコ20g(3〜4かけ)の糖質は約11gで、1日の目安25g以内に収まります。ただしミルクチョコよりカカオ70%以上のダークチョコレートのほうが糖質が少なく、カカオポリフェノールも多く含まれます。食べすぎには注意しつつ、我慢しすぎないことも大切です。

Q. 果物は甘いものですが、妊娠中に食べてはいけませんか?

果物は食物繊維や葉酸、ビタミンCを含む有益な食品です。ただし果糖の過剰摂取は血糖値上昇と中性脂肪蓄積につながるため、1日1〜2単位(例:バナナ1本、リンゴ½個、みかん2個)程度が目安です。フルーツジュースは繊維質が除去されているため、果物そのものとは扱いが異なります。

Q. 妊娠糖尿病になってしまったら、甘いものは一切禁止ですか?

「一切禁止」ではなく、「量と種類のコントロール」が基本方針です。担当の産婦人科医または管理栄養士から具体的な1日の糖質量の目標値が提示されます。一般的には1食40〜50g・1日150〜200g程度の緩やかな糖質制限が指導されることが多く、その範囲内であれば少量の甘いものも許容される場合があります。自己判断での過剰な糖質制限はケトン体増加を招き、胎児への悪影響もあるため避けてください。

Q. 砂糖の代わりにはちみつを使えば安心ですか?

はちみつの主成分はブドウ糖と果糖で、血糖値への影響はショ糖(砂糖)とほぼ同等です。GI値は砂糖(GI65前後)よりわずかに低い場合もありますが、「はちみつなら何でもOK」は誤りです。また、ボツリヌス菌の芽胞が含まれる可能性があるため、1歳未満の乳児には与えてはいけませんが、妊婦自身が摂取する分には通常問題ありません。カロリーは砂糖より高い(大さじ1で約63kcal)ことも頭に置いておきましょう。

Q. 甘いものへの強い欲求(クレービング)は正常ですか?

妊娠中の甘味クレービングは、エネルギー需要の増加・血糖変動・ホルモンの影響によって起こりやすく、多くの妊婦が経験する正常な反応です。ただし「食べたいから食べ続ける」を繰り返すと過剰摂取になるため、欲求を感じたときは「少量で満足できる食品」「血糖上昇の緩やかな食品」に置き換える工夫が有効です。つわり期の甘みへの偏りは時間とともに改善することが多いです。

Q. 妊娠初期と後期では甘いものの制限の厳しさは変わりますか?

インスリン抵抗性が最も高まるのは妊娠中期〜後期(20〜36週)のため、この時期が最も血糖管理の観点で重要です。妊娠初期はつわりで食事が偏ることも多く、無理な制限は逆効果になる場合もあります。ただし初期から加糖飲料を大量摂取する習慣がある場合は早めに見直すことが推奨されます。

Q. 妊娠糖尿病スクリーニングは全員が受けますか?

日本では妊婦健診の中でスクリーニング検査(随時血糖測定または50gGCT)が推奨されており、多くの医療機関で妊娠24〜28週に実施されます。ただし検査の方法やタイミングは医療機関によって異なるため、かかりつけの産婦人科医に確認してください。リスク因子がある場合は初回健診から追加の血糖検査が行われることもあります。

まとめ

妊娠中の砂糖・甘いものの過剰摂取は、血糖スパイクを繰り返すことで妊娠糖尿病・巨大児・胎児の代謝異常につながるリスクがあります。WHO基準を参照すると1日の遊離糖類の目安は25〜50g(できれば25g以下)。加糖飲料1本だけで容易にこの上限を超えます。

代替甘味料は適量利用なら選択肢の一つですが、「甘みへの依存を断ち切る」ことが根本的な対策です。妊娠24〜28週のGDMスクリーニングは必ず受診し、リスク因子がある場合は主治医に相談して早期から血糖管理に取り組んでください。

甘いものを我慢しすぎる必要はありませんが、「何を・どれだけ・いつ食べるか」を意識するだけで、リスクはかなり下げられます。

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妊娠糖尿病が心配な方、血糖値のコントロールについて専門的なアドバイスが必要な方は、産婦人科・産科の主治医または管理栄養士にご相談ください。当メディアでは妊娠中の食事・栄養に関する情報を継続的に発信しています。

【免責事項】本記事は医療情報の提供を目的とした一般情報であり、個々の診断・治療を代替するものではありません。妊娠中の食事管理・血糖値の異常に関しては、必ずかかりつけの産婦人科医または医療専門職にご相談ください。

【参考文献・出典】

  • WHO: Sugars intake for adults and children (2015) — Guideline
  • 厚生労働省: 日本人の食事摂取基準2020年版
  • 日本産科婦人科学会: 妊娠糖尿病の診断基準(2015年改定)
  • Zhang C, et al.: Dietary fiber intake, dietary glycemic load, and the risk for gestational diabetes mellitus. Diabetes Care 2006;29:2223-2230
  • Bowers K, et al.: A prospective study of prepregnancy dietary fat intake and risk of gestational diabetes. Am J Clin Nutr 2012;95:446-453
  • Chen L, et al.: Prospective study of pre-gravid sugar-sweetened beverage consumption and the risk of gestational diabetes mellitus. Diabetes Care 2009;32:2236-2241
  • IADPSG Consensus Panel: International association of diabetes and pregnancy study groups recommendations on the diagnosis and classification of hyperglycemia in pregnancy. Diabetes Care 2010;33:676-682

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/4/28