
妊娠中の体調変化は誰でも不安になるもの。「これは様子を見ていいの? それとも今すぐ病院に行くべき?」と迷う場面は珍しくありません。妊娠中の緊急受診が必要な症状を知っておくことは、母体と赤ちゃんの安全を守る最初の一歩です。この記事では、産婦人科の視点からトリメスター(妊娠時期)別の注意すべき症状を緊急度ごとに整理し、迷ったときの相談先や電話で伝えるべきポイントまでまとめました。「判断に迷ったら電話する」――これだけ覚えておけば大丈夫です。
この記事のポイント | |
|---|---|
緊急度の見分け方 | 赤(すぐ救急)・黄(当日受診)・緑(翌日以降に相談)の3段階で症状を分類 |
時期別の注意点 | 妊娠初期・中期・後期で警戒すべき症状が異なる |
相談先 | #7119(救急安心センター)や#8000(小児救急)、かかりつけ産院の連絡先を事前に控えておく |
電話時のコツ | 週数・症状・経過時間・出血量の4点を伝えると医療者が判断しやすい |
【最優先】今すぐ救急車を呼ぶべき症状(赤:緊急度MAX)
以下の症状が一つでも当てはまる場合は、ためらわずに119番へ電話してください。母体やおなかの赤ちゃんの命に関わる可能性があり、自家用車やタクシーではなく救急搬送が推奨される状態です。
- 大量の性器出血:ナプキンが1時間以内にいっぱいになる量。常位胎盤早期剥離や前置胎盤からの出血が疑われる
- 激しい腹痛で動けない:板のようにおなかが硬くなる場合は胎盤剥離の可能性がある
- 意識がもうろうとする・視野が急に狭くなる:重症妊娠高血圧症候群(子癇前症)や大量出血によるショックが考えられる
- けいれん発作:子癇発作の可能性があり、母児ともに危険な状態
- 破水後に臍帯(へその緒)が見える・触れる:臍帯脱出は一刻を争う
周囲に人がいれば、119番通報と同時にかかりつけ産院にも連絡を入れてもらいましょう。搬送先の決定がスムーズになります。
当日中に受診すべき症状(黄:早めの対応が必要)
命の危険が差し迫っているわけではないものの、放置すると悪化するリスクがある症状群です。まずはかかりつけ産院に電話で相談し、指示を仰いでください。
症状 | 考えられる原因 | 補足 |
|---|---|---|
少量〜中等量の出血が止まらない | 切迫流産・切迫早産・子宮頸管ポリープなど | 出血の色(鮮血か茶色か)と量を記録 |
規則的なおなかの張りが1時間に6回以上 | 切迫早産 | 妊娠37週未満であれば特に注意 |
強い頭痛+目のチカチカ+むくみ | 妊娠高血圧症候群 | 血圧を測れる環境なら測定値も記録 |
胎動が急に感じられなくなった | 胎児機能不全の可能性 | 冷たい飲み物を飲んで30分横になっても感じなければ受診 |
38℃以上の発熱+悪寒 | 絨毛膜羊膜炎・腎盂腎炎など | 妊娠中の高熱は早期治療が望ましい |
破水の疑い(水っぽいおりものが止まらない) | 前期破水 | 量が少なくても受診。入浴は避ける |
翌日以降の受診でよい症状(緑:経過観察)
すぐに命に関わる可能性は低いものの、次の健診まで放置せず早めにかかりつけ医に伝えておきたい症状です。「気にしすぎかも」と遠慮する必要はありません。
- 軽い下腹部の張りや痛みが一時的にある:子宮が大きくなる過程で起きる生理的な痛み(円靭帯痛)の場合が多い
- 少量の茶色いおりもの(1回きり):古い血液が排出されただけのケースもあるが、繰り返すなら受診
- 手足のむくみが目立つが頭痛や視覚異常はない:妊娠後期には生理的なむくみが増える。ただし急激な体重増加(1週間で500g以上)を伴う場合は早めに相談
- 便秘・腰痛・こむら返り:妊娠に伴うマイナートラブルとして一般的。日常生活に支障が出る場合は相談を
緑の症状でも、不安が強いなら電話で問い合わせて構いません。「こんなことで電話していいのかな」と思う必要はないでしょう。
妊娠時期別:特に注意すべき症状
妊娠初期・中期・後期では体の状態が異なるため、警戒すべきサインも変わります。自分の妊娠週数に合わせて確認しておくと、いざというとき慌てずに済むでしょう。
妊娠初期(〜15週)
- 強い下腹部痛+出血:異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性。卵管破裂に至ると大量出血を起こすため、痛みが片側に偏る場合は特に注意
- つわりが突然なくなる+出血:稽留流産の兆候である場合がある。ただし、つわりが自然に軽減するだけのケースも多い
- 水分がまったく取れないほどの嘔吐:妊娠悪阻として点滴治療が必要になることがある
妊娠中期(16〜27週)
- おなかの張りが頻繁に続く:子宮頸管が短くなっている可能性。切迫早産の早期発見につながる
- 水っぽいおりものの増加:高位破水との鑑別が必要な場合がある
- 胎動を初めて感じた後に丸1日感じなくなる:念のため受診が望ましい
妊娠後期(28週〜)
- 胎動減少:28週以降は胎動カウントが有用。「10回の胎動を感じるのに2時間以上かかる」場合は受診の目安
- 急激な体重増加+頭痛+上腹部痛:HELLP症候群の前兆である可能性。血液検査が必要
- 陣痛のような規則的な痛みが37週未満で起きる:早産の徴候として対応が必要
迷ったときの相談先一覧と電話のかけ方
「受診すべきか判断がつかない」ときこそ、専門家の力を借りるタイミング。以下の相談窓口を妊娠がわかった時点でスマートフォンに登録しておくことをおすすめします。
相談先 | 番号 | 対応内容 |
|---|---|---|
かかりつけ産院 | 診察券に記載の番号 | 時間外でも当直対応があることが多い。最優先で連絡 |
救急安心センター | #7119 | 看護師等が24時間対応で救急受診の要否を判断してくれる(一部地域のみ) |
小児救急電話相談 | #8000 | 本来は子どもの急病相談だが、妊産婦の不安にも対応してくれる地域がある |
119番 | 119 | 明らかに緊急の場合は迷わず通報 |
#7119は2024年時点で全国約4割の地域で利用可能とされています。お住まいの地域で対応しているかは、自治体のウェブサイトで確認できるでしょう。
電話で伝えるべき4つの情報
電話口では焦って要点を伝え損ねがち。以下の4項目をメモしておくと、医療者側の判断がスムーズになります。
- 妊娠週数:母子手帳を手元に用意しておく
- 症状の内容:「出血がある」「おなかが張る」など具体的に
- 症状が始まった時刻と経過:「1時間前から」「だんだん強くなっている」など
- 出血がある場合はその量と色:「ナプキンに500円玉くらい」「鮮血」など比喩を使うと伝わりやすい
やってはいけないNG行動
緊急時に誤った対応を取ると、症状の悪化や判断の遅れにつながることがあります。以下の行動は避けてください。
- 自己判断で「大丈夫」と決めて様子を見続ける:特に出血・破水・胎動消失は時間が勝負。「念のため」の電話が命を救うこともある
- インターネットの情報だけで安心する:同じ症状でも原因は人それぞれ。検索で得られる情報はあくまで一般論であり、個別の状態を判断できるのは医師のみ
- 破水後に入浴する:感染リスクが高まるため、シャワーも含めて避ける。清潔なナプキンを当てて受診を
- 出血時に自分で車を運転して病院に向かう:運転中に症状が悪化する可能性がある。家族やタクシーを利用するか、状態によっては救急車を呼ぶ
- 「夜だから朝まで待とう」と判断する:産婦人科には夜間当直がある。時間帯を理由に受診をためらう必要はない
よくある質問
Q. 少量の出血があるけれど痛みはありません。すぐに受診すべきですか?
痛みがなくても出血がある場合は、まずかかりつけ産院に電話で相談してください。少量の出血が自然に止まるケースもありますが、前置胎盤や切迫流産の初期症状である可能性も否定できません。自己判断で「大丈夫」と決めず、専門家に状況を伝えることが大切です。
Q. 胎動が少ない気がします。どのくらい感じなければ受診すべきですか?
一般的な目安として、「横になって2時間以内に10回の胎動を感じられるかどうか」が一つの基準とされています。冷たい飲み物を飲む、横向きで安静にするなどの工夫をしても感じられない場合は受診をおすすめします。ただし、胎動の感じ方には個人差があるため、「いつもと明らかに違う」と感じたらその時点で相談して構いません。
Q. おなかの張りと陣痛の違いがわかりません。見分け方はありますか?
おなかの張り(前駆陣痛を含む)は不規則で、しばらく安静にしていると収まることが多いもの。一方、本陣痛は規則的な間隔で繰り返し、時間とともに強くなり、安静にしても収まりません。37週未満で規則的な張りが1時間に6回以上ある場合は、切迫早産の可能性があるためすぐに連絡してください。
Q. 破水かどうか自分では判断できません。どうすればよいですか?
尿漏れとの区別がつきにくいケースは珍しくありません。破水の場合は自分の意思で止められず、さらさらした水っぽい液体が持続的に出る特徴があります。判断に迷うときは「破水かもしれない」と産院に電話すれば、来院の要否を指示してもらえるでしょう。自己判断で入浴することだけは避けてください。
Q. 夜間や休日に症状が出た場合、朝まで待っても大丈夫ですか?
赤や黄の症状に該当する場合は、時間帯に関係なくすぐに連絡してください。産婦人科のある病院には夜間・休日も当直医がいるのが一般的です。かかりつけ産院が対応できない場合は、#7119に電話すれば受診可能な医療機関を案内してもらえます。
Q. #7119につながらない地域に住んでいます。どこに相談すればよいですか?
#7119は全国すべての地域で利用できるわけではありません。対応していない地域では、お住まいの都道府県や市区町村が運営する「救急医療情報センター」や「医療機関案内サービス」を利用できます。自治体のウェブサイトで事前に番号を確認し、スマートフォンに登録しておくと安心です。
まとめ
妊娠中の体調変化に「正しく怖がる」ことは、決して神経質ではありません。赤(救急車レベル)・黄(当日受診)・緑(経過観察)の3段階を頭に入れておくだけで、いざというときの判断が格段に早くなります。
迷ったときは、かかりつけ産院への電話が最善の行動。妊娠週数・症状・経過時間・出血の量と色を伝えれば、医療者が適切に判断してくれるでしょう。「こんなことで電話してもいいのかな」と思う必要はまったくありません。あなたとおなかの赤ちゃんの安全が最優先です。
不安なときは、まずかかりつけ産院へ
MedRootでは、妊娠中の不安や疑問に寄り添う情報を発信しています。気になる症状があるときは自己判断で我慢せず、まずはかかりつけの産婦人科に相談してください。かかりつけ医がまだ決まっていない方は、お近くの産婦人科を探してみましょう。
本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を行うものではありません。症状の判断や治療方針については、必ずかかりつけの産婦人科医にご相談ください。記載の内容は公開時点の情報に基づいており、最新の医学的知見と異なる場合があります。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。
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