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妊娠高血圧症候群の症状・原因・治療法を徹底解説

2026/4/19

妊娠高血圧症候群の症状・原因・治療法を徹底解説

妊娠高血圧症候群の症状・原因・治療法を徹底解説

妊娠高血圧症候群(HDP: Hypertensive Disorders of Pregnancy)は、妊娠20週以降に高血圧を発症する疾患群であり、母体と胎児の双方に重大な影響を及ぼす可能性があるとされています。日本産科婦人科学会(JSOG)の報告では、全妊婦の約3〜5%に発症するとされ、妊産婦死亡原因の上位を占めています。本記事では、診断基準から重症度別の管理方針、分娩時期の判断、産後フォローアップまでを解説します。

この記事のポイント

  • 収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上が診断基準の柱
  • 初産婦・高年妊娠・肥満・多胎妊娠などがリスク因子として知られる
  • 重症化するとHELLP症候群や子癇を引き起こす危険性がある
  • 根本的治療は妊娠の終了(分娩)であり、重症度に応じた管理が求められる
  • 産後も高血圧が持続する場合があり、長期的なフォローアップが必要

妊娠高血圧症候群とは? — 定義と分類

妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降から分娩後12週までに高血圧を認める疾患の総称です。JSOGの定義では、収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上を高血圧の基準としています。蛋白尿の有無や発症時期によって、以下のように分類されます。

分類

特徴

妊娠高血圧腎症(PE)

高血圧に加え蛋白尿(300mg/日以上)または臓器障害を伴う

妊娠高血圧

高血圧のみで蛋白尿・臓器障害を認めない

加重型妊娠高血圧腎症

妊娠前からの高血圧に蛋白尿や臓器障害が加わったもの

高血圧合併妊娠

妊娠前または妊娠20週未満で診断された高血圧

なお、ACOG(米国産科婦人科学会)のガイドラインでは、蛋白尿がなくても血小板減少や肝機能障害を伴えば妊娠高血圧腎症と診断しうるとされています。

主な症状 — 自覚しにくい初期サインに注意

妊娠高血圧症候群は初期段階では自覚症状に乏しいことが多く、妊婦健診での血圧測定や尿検査で初めて発見されるケースが少なくありません。症状が進行すると、以下のようなサインが現れることがあるとされています。

  • 持続的な頭痛(特に後頭部の鈍い痛み)
  • 目のちらつき・視野の異常
  • 上腹部痛(みぞおち付近の痛み)
  • 急激な体重増加や顔・手足のむくみ
  • 尿量の減少

これらの症状が現れた場合は重症化のサインである可能性があり、速やかに医療機関を受診することが推奨されています。特に頭痛と視覚異常の組み合わせは子癇発作の前兆として警戒が必要です。

発症リスクを高める原因・危険因子

妊娠高血圧症候群の正確な発症メカニズムは完全には解明されていませんが、胎盤形成時の血管リモデリング不全が中心的な役割を果たすと考えられています。これにより胎盤の血流が不十分となり、母体の全身血管内皮障害が引き起こされるとする仮説が有力です。

リスク因子として、以下が報告されています。

  1. 初産婦(経産婦と比べリスクが高いとされる)
  2. 35歳以上の高年妊娠
  3. BMI 25以上の肥満
  4. 妊娠高血圧症候群の既往歴
  5. 家族歴(母親・姉妹に発症歴がある場合)
  6. 多胎妊娠
  7. 糖尿病・腎疾患・自己免疫疾患などの基礎疾患
  8. 妊娠間隔が10年以上空いている場合

ACOGのガイドラインでは、これらの高リスク因子を有する妊婦に対して、妊娠12〜16週から低用量アスピリン(81〜150mg/日)の予防投与を推奨しています。

重症合併症 — HELLP症候群と子癇

妊娠高血圧症候群が重症化すると、母児の生命を脅かす合併症に進展することがあります。代表的な重症合併症はHELLP症候群と子癇の2つです。

HELLP症候群

HELLP症候群は、溶血(Hemolysis)・肝酵素上昇(Elevated Liver enzymes)・血小板減少(Low Platelets)の3徴候を特徴とする重篤な病態です。妊娠高血圧腎症の約4〜12%に合併するとの報告があります。上腹部痛や嘔気が主な症状であり、血液検査で初めて診断されることも珍しくありません。

子癇(しかん)

子癇は、妊娠高血圧症候群に伴う全身性の痙攣発作を指します。分娩前・分娩中・産後のいずれでも発症しうるとされ、脳出血や胎盤早期剥離のリスクを伴います。予防には硫酸マグネシウムの投与が国際的に標準治療として位置づけられています。

重症度別の管理方針と治療

妊娠高血圧症候群の根本的な治療は妊娠の終了、すなわち分娩であるとされています。ただし、児の成熟度を考慮し、重症度に応じた管理が行われます。

重症度

血圧基準

管理方針

非重症

140-159/90-109mmHg

外来管理も可能。安静・減塩指導、週1〜2回の妊婦健診で経過観察

重症

160/110mmHg以上

入院管理。降圧薬投与(ニカルジピン、ラベタロール等)、胎児モニタリング強化

HELLP・子癇

緊急対応。硫酸マグネシウム投与、ターミネーション(分娩)を検討

降圧目標については、JSOGのガイドラインでは重症域の血圧を速やかに160/110mmHg未満に下げることが推奨されています。ただし、急激な降圧は胎盤血流を低下させる恐れがあるため、慎重な調整が必要とされています。

分娩時期の判断基準

分娩時期の決定は、母体の安全と児の成熟度のバランスに基づいて判断されます。ACOGが提示する一般的な目安は以下のとおりです。

  • 妊娠37週以降:非重症であっても分娩が推奨される
  • 妊娠34〜37週未満:重症の場合は分娩を考慮。非重症では慎重に経過観察
  • 妊娠34週未満:可能な限り妊娠を継続しつつ、ステロイド投与による胎児肺成熟促進を図る
  • 週数に関わらず緊急分娩の適応:コントロール不能な重症高血圧、HELLP症候群、子癇、胎児機能不全

早産域での分娩が必要となる場合には、ベタメタゾンなどの副腎皮質ステロイド投与が48時間前に行われることが望ましいとされています。分娩様式は、母体・胎児の状態を総合的に評価したうえで経腟分娩または帝王切開が選択されます。

産後のフォローアップと長期リスク

妊娠高血圧症候群は分娩後に改善することが多いものの、産後も注意が必要な疾患です。産後72時間以内に血圧がピークに達することがあり、退院後も定期的な血圧測定が推奨されています。

  • 産後12週までに血圧が正常化しない場合、本態性高血圧への移行が疑われる
  • 妊娠高血圧症候群の既往がある女性は、将来の心血管疾患リスクが約2倍になるとの報告がある
  • 次回妊娠での再発率は約15〜20%とされている
  • 産後6〜8週の健診で血圧・尿蛋白・腎機能の評価を受けることが望ましい

AHA(米国心臓協会)は2021年のガイドラインで、妊娠高血圧症候群の既往を心血管リスク因子として正式に位置づけています。産後も年1回の健康診断で血圧・脂質・血糖値を確認し、生活習慣の見直しを継続することが勧められています。

よくある質問

妊娠高血圧症候群は予防できますか?

完全な予防は困難ですが、高リスク妊婦に対する低用量アスピリンの予防投与が有効とされています。ACOGのガイドラインでは、リスク因子を持つ妊婦に妊娠12〜16週からの服用を推奨しています。適度な運動やバランスの取れた食事も予防に寄与する可能性が報告されています。

血圧が高いと言われましたが、すぐに入院が必要ですか?

非重症(140-159/90-109mmHg)で蛋白尿や臓器障害がない場合は、外来での経過観察が可能なケースもあります。ただし、160/110mmHg以上の重症域や自覚症状がある場合は、入院管理が必要となることが一般的です。主治医の判断に従うことが重要です。

食事で気をつけることはありますか?

過度な塩分摂取を控えることが基本とされています。JSOGでは1日7〜8g程度の減塩を推奨しています。ただし、極端な塩分制限や水分制限はかえって循環血液量を減少させるおそれがあるため、避けるべきとされています。カルシウムの十分な摂取も予防効果があるとの報告があります。

妊娠高血圧症候群になると帝王切開になりますか?

必ずしも帝王切開になるわけではありません。母体と胎児の状態が安定していれば、経腟分娩が選択されることもあります。ただし、児の状態が不良な場合や早産域で頸管が未熟な場合には、帝王切開が選択される傾向にあるとされています。

次の妊娠でも再発しますか?

再発率は約15〜20%と報告されています。前回の発症時期が早かった場合や重症であった場合は、再発リスクがさらに高まるとされています。次回妊娠時には早期からの低用量アスピリン投与やハイリスク管理が検討されます。

産後はどのくらいで血圧が戻りますか?

多くの場合、産後12週以内に血圧は正常化するとされています。ただし、産後72時間以内に血圧が一時的に上昇することがあるため、退院後も自宅での血圧測定を続けることが勧められています。12週を超えても正常化しない場合は、内科的な精査が必要です。

赤ちゃんへの影響はありますか?

妊娠高血圧症候群では胎盤への血流が低下するため、胎児発育不全(FGR)や低出生体重児のリスクが高まるとされています。また、胎盤早期剥離の危険性も報告されています。適切な管理下で妊娠を継続し、最適な時期に分娩することが児の予後改善に重要です。

まとめ

妊娠高血圧症候群は、早期発見と重症度に応じた適切な管理が母児の予後を左右する重要な疾患です。自覚症状に乏しい初期段階では妊婦健診での血圧測定と尿検査が発見の鍵となります。リスク因子を有する場合は、妊娠初期からの予防的介入と綿密なモニタリングが推奨されています。また、産後の長期的な心血管リスクにも目を向け、継続的なフォローアップを受けることが大切です。

妊娠中の不安、一人で抱えていませんか?

妊娠高血圧症候群をはじめとする妊娠中のトラブルは、早期の相談が重要です。当院では妊婦健診を通じた継続的な血圧管理と、ハイリスク妊娠に対応できる体制を整えています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

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※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。症状や治療については、必ず担当医にご相談ください。

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この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/4/27