Micro-TESE(顕微鏡下精巣内精子採取術)は、手術用顕微鏡で精巣内の精細管を観察し、精子が存在する可能性のある組織を採って調べる手術です。主に非閉塞性無精子症で検討します。
精子が見つかっても妊娠・出生を保証するものではなく、事前の診断と、その後のICSI(顕微授精)の計画を合わせて確認します。
検討する段階・術後に確認すること
| 状況 | 確認・対応 |
|---|---|
| 精液検査で精子が見つからなかった | 再検査と専門的な評価を受け、閉塞性か非閉塞性か、治療可能な原因があるかを確認する |
| 手術を提案された | 自分の適応、回収できない可能性、遺伝学的検査、ICSIとの連携を確認する |
| 成功率を示された | 精子回収と妊娠・出生を区別し、対象、初回か再手術か、分母と期間を聞く |
| 術後に強い・増す痛み、急な腫れ、発熱、出血など | 「1週間は様子を見る」とせず、すぐ手術施設へ連絡する。急な悪化は直ちに受診する |
閉塞性と非閉塞性で、治療の考え方が異なります
閉塞性無精子症は精子の通り道の問題、非閉塞性無精子症(NOA)は精子を作る働きの問題などによって、精液中に精子が見つからない状態です。一回の検査だけで手術方法を決めず、再検査、病歴や診察、ホルモン・超音波などで評価します。
EAUは、NOAの確認に遠心分離後も精子が見つからないことを2回の精液検査で確認し、ホルモン、遺伝学的検査などを含む評価を勧めています。FSHが高い、精巣が小さいという所見だけでは、精子回収の可否を確実に予測できません。EAU:非閉塞性無精子症の評価と推奨(11.6.2)
閉塞性の場合は、精路の再建やほかの精子採取法なども選択肢になります。すべての無精子症にMicro-TESEが最初の治療となるわけではありません。
精子回収率と、妊娠・出生率は別です
精子回収率は、手術を受けた人などを分母に精子が見つかった割合を示します。受精、胚の発育、移植後の妊娠、出生とは違う結果です。対象の病態、手術歴、方法、成績の集め方でも変わります。
EAUが紹介するNOAの研究統合では、通常TESEとMicro-TESEの比較結果も、次のように研究の集め方で異なっています。
| EAUが紹介する統合結果 | 通常TESE | Micro-TESE |
|---|---|---|
| 症例対照研究を統合した未調整の精子回収率 | 35%(95%信頼区間30〜40%) | 52%(同47〜58%) |
| 別のメタ解析での比較 | 46% | 46% |
出典:EAU:Conventional and microdissection testicular sperm extraction。これらは個人の成功確率や日本の全施設共通の率ではありません。
通常TESEと必ず同じ、Micro-TESEなら必ず高い、という保証にもできません。EAUは組織への影響や回収の可能性を踏まえNOAでMicro-TESEを選択肢として推奨していますが、比較研究の確かさには限界があるとしています。
手術施設の説明では、自分に近い病態、初回と再手術、回収できた精子の利用状況を確認してください。回収率にICSIの妊娠率を単純に掛けて、個人の出生確率を算出することも避けます。
遺伝学的検査と、術前ホルモン治療を確認します
染色体やY染色体微小欠失などの検査は、手術の適応や、子どもへ伝わり得ることを考えるうえで大切です。EAUは、完全なAZFa・AZFb欠失では精子回収手術を行わないとしています。
「AZFに何らかの変化があればすべて同じ」とせず、欠失の範囲と結果の意味を専門医に確認し、必要な遺伝カウンセリングを受けます。
手術前にホルモン薬を使えば回収率が上がる、という一律の方法も確立していません。EAUは特発性NOAでの術前刺激の根拠は限られ、日常的な実施を勧めていません。一方、ホルモンの分泌の病気など、原因に応じた薬物治療を検討する状況は別です。診断、目的、期待できる効果と限界を聞いてください。
手術と精子を使う治療の流れ
- 専門医が診断と適応を確認し、採卵を行う施設とも治療計画を共有する。
- 麻酔、切開、片側・両側などの手術範囲と、回収できなかった場合の方針を説明してもらう。
- 顕微鏡で精細管を観察して組織を採り、培養部門などで精子の有無を調べる。
- 見つかった精子の状態に応じて、凍結保存するか、採卵と合わせて使うかを判断する。
- 創部と体調の診察を受け、必要に応じてホルモンも経過観察する。
麻酔の方法、手術時間、日帰りか入院かは施設と本人の状態で異なります。手術中の痛みや術後の負担を「必ずない」と保証せず、麻酔・鎮痛と帰宅後の連絡方法を確認してください。
HFEAは、採取した精子はICSIなどで利用し、精子の状態によっては凍結よりすぐ使うことを勧める場合もあると説明しています。すべての人が同じ日に採卵する、必ず凍結していつでも使える、という計画ではありません。
別施設の場合は、採取・保存・搬送・使用の責任と日程を事前に確認します。HFEA:外科的精子採取と、その後の治療
術後の痛み・腫れ・ホルモンへの影響
痛みや腫れ、出血・血腫、感染、テストステロンの低下などが起こる場合があります。Micro-TESEでも精巣への影響がゼロになるわけではありません。HFEAは、副作用があればすぐ治療先へ連絡するよう説明しています。EAUも、精子採取術後はホルモンの長期的な経過観察を考慮するとしています。
強い痛みや腫れ、発熱、出血などを「術後によくあること」と決めて待たないでください。仕事、運動、入浴、性交の再開日は、手術内容や創部に応じて確認します。全員が翌日復職、2〜4週間で同じ運動へ戻れる、とする日程表ではありません。
費用と、回収できなかった場合の選択
手術、麻酔・入院、検査、精子の凍結・保管、搬送、ICSIなどの費用を分け、保険・自費の扱いと追加費用を施設で確認します。所得や治療条件による制度の違いもあるため、「高額療養費で月8〜9万円が全員の上限」とは説明できません。保存の更新・終了条件も確認してください。
精子が見つからない場合、再手術の適応は初回の所見や体調、治療の希望を踏まえて判断します。一律に半年休めば再手術できる、反対側なら必ず見つかる、という保証はありません。
休止・終了、ほかの家族の持ち方なども含め、希望する範囲で相談できます。国内で利用できる制度や医療の条件は個別に確かめ、結論を急がず心理的な支援も利用してください。
出典と確認日
2026年10月26日にEAUの現行男性不妊指針とHFEAの外科的精子採取の採用箇所を確認しました。精子の回収と妊娠・出生を区別し、個人の結果や一律の費用・回復期限を保証していません。医師による本記事の個別監修はありません。

この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
公的機関や医学会などの情報をもとに、女性の健康と医療の選択に役立つ情報を整理しています。