養子縁組が気になっても、治療を続けるか、申し込むかを今すぐ決める必要はありません。まず気持ちと制度の疑問を分け、パートナーや相談先と話すところから始められます。特別養子縁組は、子どもの利益を中心に家庭をつくる制度です。
迷っている今、最初にできる3つのこと
- 気持ちを分ける:治療を休みたい気持ちと、養子を迎えて育てたい気持ちは、別々に書き出して構いません。
- 知りたいことを選ぶ:子どもの暮らし、必要な準備、仕事、費用など、今いちばん気になる点を一つ選びます。
- 結論と情報収集を分ける:児童相談所などに相談・説明会の内容を問い合わせ、申込みの条件と区別して確認します。
「何か月で心を整理すべき」「治療を何回受けたら次へ進むべき」という共通の期限はありません。悲しさ、不安、安堵、期待が混ざることもあります。決めきれない自分を責める材料にしないでください。
パートナーと温度差があるときの話し方
相手を説得する場にする前に、どこが同じで、どこが違うかを確かめる方法があります。次の順番は対話の例で、決まった回数や期間を守る課題ではありません。
- それぞれ書く。「期待していること」「不安なこと」「まだ分からないこと」を短くメモする。
- まず聞く。「何がいちばん心配?」と尋ね、すぐに反論や結論を返さない。
- 同じ情報を見る。制度や説明会の案内を一緒に確認し、事実と想像を分ける。
- 次の一歩だけ決める。問い合わせる、説明を聞く、いったん休むなど、双方が無理なくできることを選ぶ。
- 必要なら第三者を入れる。治療施設の相談担当者や、夫婦の対話を扱う心理職に相談する。
「今は結論を出せない。まず制度について一緒に知りたい」と伝える形でも構いません。話すこと自体がつらいときは、いったん中断し、別々に相談する方法もあります。
つらさを相談できる場所
- 制度・子育ての準備:地域の児童相談所、許可を受けた民間あっせん機関へ。迎えた後の支援も確認します。
- 治療や気持ち・夫婦の対話:通院先の相談窓口、公認心理師・臨床心理士などへ。養子縁組の相談経験、料金、守秘の扱いを利用前に確かめます。
- 当事者の経験:里親・養親の会や交流会など。体験談と制度上の条件は分け、子どもや実親の個人情報をSNSなどに載せないようにします。
眠れない、食べられない、生活への支障があるときは、決断が済むまで相談を待つ必要はありません。「死にたい」「消えたい」と感じるときは一人で抱えず、厚労省の電話・SNS相談案内などにつながってください。自分の安全を保てない切迫した状況では119番へ助けを求めてください。
気持ちを書き出すときのヒント
次は気持ちを整理する例です。全員が同じ段階を通る、書けば解決するというものではありません。書くほどつらくなるときはやめても構いません。
| 浮かんだ気持ち | 書いてみる問い |
|---|---|
| 罪悪感・悲しさ | これまで大切にしてきたことは何か。これから守りたいものは何か。 |
| 不安・恐れ | どんなことが怖いのか。情報で確かめられる点は何か。 |
| 安堵 | 負担が軽くなりそうな点は何か。どんな休みや支えがほしいか。 |
| 自己否定 | 友人が同じことで悩んでいたら、どんな言葉をかけるか。 |
| 期待・希望 | 子どもの暮らしを支えるために、学びたいことは何か。 |
家族・友人・職場に、どこまで伝える?
一度に全員へ説明する必要はありません。相手との関係、手続きや養育への協力、子どものプライバシーを考え、必要な範囲を相談先とも整理しましょう。「必ず事後報告にする」など、一つの方法に決める必要もありません。
- 家族:養育の協力が必要かも含めて考えます。「今は情報を集めている段階です。結論を急がせずに聞いてもらえると助かります」。
- 友人:聞いてほしい相手と、伝えたい範囲を選びます。「詳しい話は、話せるようになったら伝えます」。
- 職場:休業や勤務調整の見通しが必要になったら、人事等へ対象条件・申請時期・必要書類を確認します。職場全体への周知とは分けて考えます。
否定的な反応には「私たちも学んでいるところです。今は決断を迫らずに見守ってほしいです」と境界を伝える方法があります。すべての質問にその場で答える必要はありません。
特別養子縁組の制度を確認する
特別養子縁組は、実親による養育が著しく困難・不適当などの事情があり、子どもの利益のため特に必要と家庭裁判所が認めた場合に成立します。実親側との法的な親族関係を解消し、養親との安定した親子関係をつくります。
- 養親は夫婦で共同して縁組し、原則25歳以上。一方が25歳以上であれば、もう一方は20歳以上でも認められます。
- 子どもは審判請求時に原則15歳未満。15歳前からの監護など一定の事情がある場合の例外は、相談先・裁判所へ確認します。
- 実親の同意が原則として必要ですが、虐待などの事情により不要となる場合もあります。
- 6か月以上の監護状況などを踏まえて成立が判断されます。これは相談から成立までの総期間ではありません。
普通養子縁組、特別養子縁組、里親制度では目的や法的関係、手続きが異なります。普通養子縁組を「未成年でも届出だけ」と考えたり、里親から必ず縁組へ進めると考えたりせず、希望と制度を児童相談所などで確認してください。
期間・費用・審査で、先に聞くこと
「待機は一律1〜5年」「民間なら50〜100万円」と固定して予定を組むことは避けます。相談・研修・適性の確認・子どもとの関係づくり・裁判所の手続きでは、それぞれ必要な期間や費用が異なります。申込みをしても縁組の成立が約束されるわけではありません。
- 費用:相談・研修・あっせん等の手数料、実費、支払時期、中止した場合の扱いを分けて、書面で確認する。
- 条件:法律上の要件と、機関の受入れ方針を分ける。治療歴や治療継続について、どの時点で何を確認するか尋ねる。
- 支援:養育中に困ったときの連絡先、子どもへの出自の伝え方、縁組成立後の相談体制を確かめる。
裁判所の案内では、成立の申立ての収入印紙は子ども1人につき800円で、連絡用の郵便料等は別に必要です。特別養子適格の確認の申立ての印紙は不要とされています。この金額を縁組全体の総費用と取り違えないでください。
気になる疑問を確認する
治療の終了時期や治療歴で、審査が決まる?
「治療歴があれば必ず有利・不利」とは言い切れません。あっせん機関は家庭状況や養育の見通しなどを確認します。情報収集と申込みの条件は分け、治療との並行について希望先に確認してください。治療方針は担当医とも相談します。
待っている間や、迎えた後が不安なときは?
子どもの発達や背景を学び、生活・仕事・支援者の見通しを相談する準備ができます。愛着や後悔の有無を一律に保証することはできません。困ったときに支援を受ける前提で、成立後まで付き合える相談先を確かめましょう。
子どもに出自を伝える時期は?
年齢だけで一律に決めず、子どもの発達と気持ちを大切にして継続的に支えることが必要です。あっせん機関等の支援を受けながら、伝える内容や方法、子どもが知りたいときの対応を準備します。
休業や経済的な支援は利用できる?
養子や特別養子縁組のために監護されている子どもなども、条件を満たせば育児休業等給付の対象になります。個別の対象・手続きは勤務先とハローワークへ。費用の控除や自治体の補助も、自動的に対象になると決めず、制度ごとの窓口へ確認してください。
参考にした公的資料
- こども家庭庁「特別養子縁組制度について」:制度の要件、許可を受けたあっせん事業者の一覧、相談窓口。
- 「民間あっせん機関が適切に養子縁組のあっせんに係る業務を行うための指針」:情報・費用の説明、養親への支援、出自を知る権利。
- 裁判所「特別養子適格の確認・特別養子縁組成立」:家庭裁判所の手続きと申立て費用。
- 厚生労働省「Q&A~育児休業等給付~」Q2。
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」:電話・SNSの相談先。
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この記事を書いた人
EggLink編集部
医療・婦人科専門メディア
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