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産後甲状腺炎とは?出産後の甲状腺機能異常の症状と治療

2026/4/19

産後甲状腺炎とは?出産後の甲状腺機能異常の症状と治療

産後甲状腺炎とは?出産後に起こる甲状腺の一時的な炎症

産後甲状腺炎は、出産後1年以内に発症する甲状腺の自己免疫性炎症です。産後の女性の約5〜10%に発症するとされ、甲状腺ホルモンの異常(甲状腺中毒症→甲状腺機能低下症)を引き起こします。

産後うつと症状が重なることが多く、「産後の疲れ」「育児ストレス」と見過ごされやすいのが大きな問題です。適切な診断と経過観察により、多くの場合は1年以内に自然回復しますが、一部の患者では永続的な甲状腺機能低下症に移行するため注意が必要です。

発症の3つのパターン

パターン

時期

症状

頻度

甲状腺中毒症のみ

産後1〜6ヶ月

動悸、体重減少、イライラ

約30%

甲状腺機能低下症のみ

産後3〜12ヶ月

倦怠感、体重増加、抑うつ

約25%

中毒症→低下症の二相性

産後1〜12ヶ月

最初は中毒症、その後低下症に移行

約45%

甲状腺中毒期の症状と経過

産後甲状腺炎の最初のフェーズでは、炎症により甲状腺組織が破壊され、蓄えられていた甲状腺ホルモンが血中に放出される「破壊性甲状腺中毒症」が生じます。バセドウ病とは異なるメカニズムです。

中毒期の症状

  • 動悸・頻脈
  • 体重減少(食欲は正常〜亢進)
  • 発汗増加、暑がり
  • 不安感・イライラ
  • 手指の震え
  • 不眠

中毒期は通常1〜3ヶ月で自然に落ち着きます。バセドウ病との鑑別が重要で、甲状腺シンチグラフィーや抗TSH受容体抗体(TRAb)の測定が行われます。

バセドウ病との鑑別ポイント

項目

産後甲状腺炎

バセドウ病

甲状腺シンチグラフィー

取り込み低下

取り込み亢進

TRAb

陰性

陽性

眼球突出

なし

あることが多い

経過

自然軽快が多い

治療が必要

甲状腺機能低下期の症状と産後うつとの混同

甲状腺機能低下期は産後3〜8ヶ月頃に出現することが多く、症状が産後うつと酷似しているため見逃されやすいフェーズです。

低下期の症状

  • 極度の疲労感:睡眠をとっても回復しない
  • 体重増加:産後の体重が戻らない
  • 集中力・記憶力の低下:ブレインフォグ
  • 抑うつ症状:気分の落ち込み、興味の喪失
  • 便秘
  • 乾燥肌・脱毛
  • 寒がり
  • 母乳分泌の減少

産後うつとの鑑別の重要性

産後うつと診断された女性の中に、実は産後甲状腺炎が原因だったケースが含まれている可能性があります。産後うつの症状がある場合は、TSH・fT4の血液検査を必ず行うことが推奨されています。甲状腺機能低下症が原因であれば、甲状腺ホルモン補充で症状が劇的に改善する場合があります。

検査と診断の流れ

産後甲状腺炎の診断には血液検査が基本であり、必要に応じて画像検査が追加されます。

基本検査項目

  • TSH:甲状腺機能の最も鋭敏な指標
  • fT4(遊離サイロキシン):甲状腺ホルモンの活性型
  • fT3(遊離トリヨードサイロニン):T4から変換される活性型ホルモン
  • 抗TPO抗体(抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体):産後甲状腺炎で約80〜90%が陽性
  • TRAb:バセドウ病との鑑別用

スクリーニングが推奨される女性

  • 甲状腺疾患の既往歴がある
  • 抗TPO抗体が妊娠前から陽性
  • 1型糖尿病など他の自己免疫疾患がある
  • 前回妊娠時に産後甲状腺炎を発症した
  • 産後うつの症状がある

治療と経過観察

産後甲状腺炎の治療は、症状のフェーズと重症度に応じて行われます。

甲状腺中毒期の治療

  • 多くの場合、経過観察のみで自然軽快
  • 動悸や頻脈が強い場合はβブロッカー(プロプラノロール等)で対症療法
  • 抗甲状腺薬(メチマゾール等)は無効(破壊性中毒症のため)
  • 授乳中のβブロッカー使用は種類と用量に注意が必要

甲状腺機能低下期の治療

  • TSH 10 mIU/L以上、またはTSH 4〜10で症状がある場合にレボチロキシン(チラーヂンS)を開始
  • 授乳中でも安全に使用可能
  • 通常6〜12ヶ月で減量・中止を試みる
  • 約20〜30%が永続的な甲状腺機能低下症に移行し、継続治療が必要

長期的な経過観察

  • 自然回復後も、年1回のTSH測定が推奨
  • 次回妊娠時の再発リスクは約70%
  • 5年以内に永続的な甲状腺機能低下症に移行するリスクが約20〜30%

よくある質問

Q. 産後甲状腺炎は授乳に影響しますか?

甲状腺機能低下症が重度の場合、母乳分泌が減少することがあります。レボチロキシンでの治療は授乳中も安全であり、治療開始後に母乳分泌が回復するケースもあります。

Q. 次の妊娠でも産後甲状腺炎は起きますか?

再発リスクは約70%と高いです。抗TPO抗体が陽性の場合は特にリスクが高いため、次回妊娠中〜産後の甲状腺機能モニタリングが推奨されます。

Q. 産後甲状腺炎は自然に治りますか?

約70〜80%の症例は12ヶ月以内に自然回復します。ただし20〜30%は永続的な甲状腺機能低下症に移行するため、定期的な経過観察が必要です。

Q. 産後の抜け毛と甲状腺は関係ありますか?

産後の脱毛は多くの場合ホルモン変動による生理的なもの(テロゲン・エフルビウム)ですが、甲状腺機能低下が原因の場合もあります。脱毛が産後6ヶ月以上続く場合は甲状腺検査を受けることをおすすめします。

Q. 産後うつの薬を飲んでいますが、甲状腺も検査すべきですか?

はい、ぜひ検査してください。産後うつと診断されていても、産後甲状腺炎が合併または真の原因であるケースがあります。甲状腺機能低下症が原因であれば、レボチロキシンの投与で著明に改善する可能性があります。

まとめ

産後甲状腺炎は産後女性の5〜10%に発症する自己免疫性疾患で、甲状腺中毒症→機能低下症の二相性パターンで進行することが多いです。症状が産後うつや育児疲れと混同されやすいため、産後に疲労・抑うつ・体重変動がある場合はTSH検査が推奨されます。

多くは1年以内に自然回復しますが、約20〜30%が永続的な機能低下症に移行するため、長期的な経過観察が重要です。

当院では産後の甲状腺検査・治療を実施しています。産後の体調不良でお悩みの方はお気軽にご相談ください。

E

この記事を書いた人

EggLink編集部

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公開:2026/4/19更新:2026/5/4