エストロゲンを含む配合ピルには、静脈や脳・心臓などの血栓症に注意が必要です。リスクは薬と本人の条件で変わります。急な脚の痛み・腫れ、胸痛・息切れ、激しい頭痛などがあれば、服用をやめて救急受診してください。
この症状は、服用をやめて救急医療機関へ
- 脚:急な痛みや腫れ。
- 胸・呼吸:突然の息切れ、胸の痛み。
- 頭・手足・言葉・目:激しい頭痛、脱力・麻痺、ろれつが回らない、急な視力の異常。
緊急なら119番で、薬名と服用中であることを伝えます。症状が全部そろうまで待たず、体操やオンラインのセルフチェックで受診を遅らせないでください。
血栓症が疑われる脚の痛み・腫れ・しびれ・発赤、頭痛・吐き気などは、軽くても服用を中止し、直ちに医師へ相談します。両脚のむくみだから安全、とも判断できません。
静脈の血栓症と、脳・心臓の異常を分ける
| 種類 | 何が起こるか |
|---|---|
| 深部静脈血栓症:DVT | 主に脚などの深い静脈に血の塊ができる。痛み・腫れ・熱感などが現れることがある。 |
| 肺塞栓症:PE | 血の塊が肺の血管を塞ぐ。息切れや胸痛、失神などが起こることがある。 |
| 脳梗塞・心筋梗塞など | 動脈系の異常。急な麻痺・言葉や視力の異常、胸痛などにも注意する。 |
DVTとPEを合わせて静脈血栓塞栓症(VTE)と呼びます。症状だけで種類を診断したり、脚を曲げたときの痛みだけで否定したりすることはできません。
エストロゲンを含む薬は血液の固まりやすさに影響し、血栓症に関わります。低用量・超低用量という名称でもリスクはなくならず、使える条件の確認が必要です。
発症頻度は、分母と成分をそろえて見る
下表は欧州の規制当局が示した、年間の静脈血栓症の推定です。分母は「1万人を1年間」で、10万人ではありません。
| 対象・含まれる黄体ホルモン | 1万人を1年間追った場合 |
|---|---|
| 配合型避妊薬を使わず、妊娠していない | 約2人 |
| レボノルゲストレル、ノルエチステロンなど | 約5〜7人 |
| デソゲストレル、ドロスピレノンなど | 約9〜12人 |
海外の集団の推定であり、日本の個人の発症確率ではありません。年齢、病歴、薬などで変わります。脳卒中の発生率や、妊娠・産後の別条件の数字とも混ぜないでください。
「何倍」という相対リスクと、同じ人数・期間で何人増えるかという絶対リスクは別です。比較相手と対象が同じかを確認します。小さい確率でも、禁忌や今の症状を軽く扱う根拠にはなりません。
世代やブランド名だけで、安全の順位は決まらない
マーベロンやファボワールに含まれる黄体ホルモンはデソゲストレルです。レボノルゲストレルを含むアンジュなどとは成分が異なり、世代の分類を取り違えないようにします。
マーベロンの添付文書は、ほかの経口避妊薬が適当でない場合に検討するとしています。レボノルゲストレルなどと比べ、静脈血栓症リスクの増加を示唆する報告があるためです。
どれが適するかは、症状、病歴、ほかの副作用、避妊・治療の目的から医師が判断します。気になるときは薬名を伝え、変更の利点と注意点を相談してください。
使えない条件と、処方前に伝えること
配合ピルには、血栓症や脳血管障害などの既往、血栓性素因、前兆のある片頭痛、35歳以上で1日15本以上の喫煙などの禁忌があります。妊娠・授乳や、ほかの病気も確認が必要です。
アンジュ・マーベロンでは、手術前4週以内・術後2週以内・産後4週以内、長期間安静が必要な場合も禁忌です。授乳中の禁忌を「産後6週だけ」と限定しないでください。
- 本人の病歴:血栓症、片頭痛、血圧・血糖・脂質、心臓・肝臓などの病気。
- 家族歴・生活:家族の血栓症と発症年齢、喫煙、体格、長く動けない状況や旅行。
- 予定と薬:手術・入院・産後や授乳、妊娠の可能性、すべての薬・サプリ。
これは禁忌の全一覧ではありません。該当項目の数やBMIだけで、処方の可否を自己判定しないでください。リスク因子がなくても血栓症は起こる場合があります。
普段の確認と、移動・手術前の相談
| 場面 | 確認すること |
|---|---|
| 日常 | 禁煙し、血圧や体調の変化を処方医へ伝える。薬の説明に沿って定期受診する。 |
| 長時間の移動 | 事前に持病・薬を相談し、可能な範囲で歩行やふくらはぎの運動を行う。症状がある場合は予防行動より受診を優先。 |
| 手術・入院・長い安静 | 処方医と担当医へ薬名を伝え、休薬・再開と代替避妊を確認する。自分で開始・再開を決めない。 |
着圧ストッキングや予防薬が全員に必要なわけではありません。リスクに合わせて相談し、アスピリンや抗凝固薬を自己追加しないでください。
脱水を避けることは大切ですが、水分を多く飲めば旅行時の血栓を防げると保証する根拠はありません。心臓・腎臓などで水分制限がある方に、一律の量を勧めることもできません。
これらを行えば血栓症がゼロになるわけではありません。使用中・中止後を問わず、疑わしい症状があれば受診し、服用歴を伝えてください。
血液検査だけで「安全」と決めない
検査は、症状と病歴、診察に合わせて選びます。血栓症が疑われる場合には、超音波やCTなどの画像検査が必要になることがあります。自己チェックだけで確定・除外はできません。
無症状の全員に、血栓性素因の検査一式を行うわけではありません。本人・家族の血栓症や妊娠の経過などを伝え、必要な検査、結果で何が変わるか、費用を確認してください。
添付文書には、6か月ごとの検診や、婦人科検査などの確認が示されています。今回の薬で必要な内容と受診日を聞き、異常があれば予定を待たず相談します。
変更・中止を考えるときは、次の方法も一緒に
避妊目的なら、コンドーム、子宮内の避妊器具・システム、黄体ホルモン単剤薬などを相談できます。エストロゲンを含まない方法でも、病歴による制限や副作用はあります。
月経痛などの治療目的なら、別の薬や治療の利益・注意点も確認します。緊急症状がなければ自己変更せず相談し、緊急症状があれば冒頭どおり服用をやめて救急受診してください。
一部の抗てんかん薬、リファンピシン、セイヨウオトギリソウなどは避妊効果にも影響します。新しい薬を使うときは、ピル服用中であることを医師・薬剤師へ伝えます。
参考にした資料
- PMDA:マーベロン添付文書・患者向ガイド、アンジュ添付文書。
- EMA:配合型ホルモン避妊薬のリスク評価(2013〜2014年)。
- CDC Yellow Book 2026:旅行とDVT・PE、CDC:配合型ホルモン避妊薬の適用基準(2024年)。海外の基準と国内の処方条件を区別します。
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この記事を書いた人
EggLink編集部
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